大銀杏おほいてふ)” の例文
あめにしづくの拍子木ひやうしぎが、くもそこなる十四日じふよつかつきにうつるやうに、そでくろさもかんで、四五軒しごけんきたなる大銀杏おほいてふしたひゞいた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お光も小池と同じやうに、名も知れぬ神の宮の大銀杏おほいてふを見上げて言つた。ひよが二羽、銀杏の枝から杉の木に飛び移つて、汽笛きてきのやうな啼き聲を立てた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
現に残つてゐる大銀杏おほいてふも江東小学校の運動場の隅に、——といふよりも附属幼稚園の運動場の隅に枝をのばしてゐた。当時の小学校の校長の震災の為に死んだことは前に書いた通りである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
陽氣やうき加減かげんか、よひまどひをして、町内ちやうない大銀杏おほいてふ、ポプラの古樹ふるきなどでことがあると、ふくろだよ、あゝ可恐こはい。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『黒い煙の中を蜂が子をくはへて逃げて行つたね。』と、小池はこの名も知れぬ神の宮の大銀杏おほいてふを、愛宕あたごさんの大銀杏でゝもあるやうに、見上げつゝ言つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
風呂の中で歌祭文うたざいもんを唄つてゐるかかあたばね、上り場で手拭をしぼつてゐるちよんまげ本多ほんだ文身ほりものの背中を流させてゐる丸額まるびたひ大銀杏おほいてふ、さつきから顔ばかり洗つてゐる由兵衛奴よしべゑやつこ水槽みづぶねの前に腰を据ゑて
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
丹塗にぬりの鳥居をくゞつて、大銀杏おほいてふの下に立つた時、小池はう言つて、おみつ襟足えりあしのぞき込むやうにした。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ところで、わたしたちのまち中央まんなかはさんで、大銀杏おほいてふ一樹ひときと、それから、ぽぷらの大木たいぼく一幹ひともとある。ところたけも、えだのかこみもおなじくらゐで、はじめはつゐ銀杏いてふかとおもつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いてる……二時半にじはんだ。……やがて、里見さとみさんの眞向まむかうの大銀杏おほいてふるだらう。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)