大様おほやう)” の例文
旧字:大樣
半白の頬鬚ほほひげを蓄へた主人役の伯爵が、胸間に幾つかの勲章を帯びて、路易ルイ十五世式の装ひをらした年上の伯爵夫人と一しよに、大様おほやうに客を迎へてゐた。
舞踏会 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ひかるはまた男性的でないのではありません。あの大様おほやう生々いき/\とした線でく絵を見て下さい、ひかるの書いて居る日記を見て下さい、ひかるは母親のうらやんでい男性です。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
彼はたゞ大様おほやううなづいたきりであつたが、やがて女の傍を離れて、母屋おもやの方へ行つた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
其時分そのじぶんは人間が大様おほやうだから、かねあづける通帳かよひちやうをこしらへて、一々いち/\けては置いたが、その帳面ちやうめん多助たすけはうあづけたまゝくにかへつたのを、番頭ばんとうがちよろまかしてしまつたから、なに証拠しようこはない。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
からぬ口髭くちひげはやして、ちひさからぬ鼻に金縁きんぶち目鏡めがねはさみ、五紋いつつもん黒塩瀬くろしほぜの羽織に華紋織かもんおり小袖こそで裾長すそなが着做きなしたるが、六寸の七糸帯しちんおび金鏈子きんぐさりを垂れつつ、大様おほやうおもてを挙げて座中をみまはしたるかたち
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さみしい秋の黄色い葉はひろい大様おほやうな胸にねむる。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
僕等二人はすれ違ふ時に、そつと微笑を交換した。が、少女はそれも知らないやうに、やはり静に通りすぎた。かすかにほほが日に焼けた、大様おほやうの顔だちの少女である。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)