夕陽せきやう)” の例文
乘組のりくんだふね帆柱ほばしらに、夕陽せきやうひかりびて、一ゆきごとたかきたとまつたはうつたとき連添つれそ民子たみこ如何いかかんじたらう。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
最早もはや夕陽せきやうに及びしゆゑ明日參るべしとて目録もくろくなど用意よういに及びけり抑々そも/\白水翁はくすゐおういふよく人の禍福くわふく吉凶きつきよう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
純紫色じゆんしゝよくは自然の神の惜みて容易に人間に示さゞる所、晩秋の候、天の美しく晴れたる日、夕陽せきやうを帶びて、この木曾の大溪を傳ひ行けば、駒ヶ嶽絶巓ぜつてんの紅葉なゝめに夕日の光を受けて
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
私は毎年の秋たけだいに開かれる絵画展覧会を見ての帰り道、いつも市気しき満々まん/\たる出品の絵画よりも、むかうをか夕陽せきやう敗荷はいかの池に反映する天然の絵画に対して杖をとゞむるを常とした。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
夕陽せきやうほ濃き影を遠き沖中おきなかの雲にとどめ、滊車きしやは既にあは燈火ともしびを背負うて急ぐ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あに夕陽せきやう印影いんえいならんや。うたがふらくは紅涙こうるゐゆきむることを。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
夕陽せきやうの影漸く薄からんとするの頃なりき。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)