基礎どだい)” の例文
竹翁の昔より続いた橋本の家が一夜のうちに基礎どだいからして動揺ぐらついて来たことや、子がそれをこわさずに親が壊そうとしたことや
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
未曽有の風に基礎どだい狭くて丈のみ高きこの塔のこらえんことのおぼつかなし、本堂さえもこれほどに動けば塔はいかばかりぞ、風を止むる呪文はきかぬか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
静子は妙にトチツて、其儘口をつぐんで了つた。人は長く別れてゐると、その別れてゐた月日の事は勘定に入れないで、お互ひにまだ別れなかつた時の事を基礎どだいに想像する。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
根太ねだゆるんだはお互様じゃが、わしとこなど、随分と基礎どだいも固し、屋根もどっしりなり、ちょいとや、そっとじゃ、流れるのじゃなかったに、その時さの、もう洪水みずが引き際というに
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
単に冬子の口供こうきょう基礎どだいとして、其余そのよ好加減いいかげんの想像を附加つけくわえるだけの事である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
岩畳な彼をるゝその家は、基礎どだい切石きりいしにし、はしらの数を多くし、屋根をトタンでつつみ、えんけやきで張り、木造のおにいわやの如く岩畳である。彼に属する一切のものは、其堅牢けんろうな意志の発現はつげんである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
もつとも蓮太郎のは哲学とか経済とかの方面から左様さういふ問題ことがらを取扱はないで、むしろ心理の研究に基礎どだいを置いた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
けれどもだの、くさだのよりも、人間にんげん立優たちまさつた、立派りつぱなものであるといふことは、いかな、あなたにでもわかりましやう、づそれを基礎どだいにして、お談話はなしをしやうからつて、きました。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
雨さへ加はり来りし上周囲に樹木もあらざれば、未曾有の風に基礎どだい狭くて丈のみ高き此塔のこらへむことの覚束なし、本堂さへも此程に動けば塔は如何ばかりぞ、風を止むる呪文はきかぬか
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
けれども木だの、草だのよりも、人間が立ちまさった、立派なものであるということは、いかな、あなたにでも分りましょう、まずそれを基礎どだいにして、お談話はなしをしようからって、聞きました。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
汝の建てられた彼塔は如何あらうと思はるゝ、丈は高し周囲に物は無し基礎どだいは狭し、の方角から吹く風をも正面まともに受けて揺れるは揺れるは、旗竿ほどに撓むではきち/\との軋る音の物凄さ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
おまえの建てられたあの塔はどうあろうと思わるる、丈は高し周囲まわりに物はなし基礎どだいは狭し、どの方角から吹く風をも正面まともに受けて揺れるわ揺れるわ、旗竿はたざおほどに撓んではきちきちときしる音の物凄ものすご
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)