園生そのう)” の例文
往来より突抜けて物置のうしろ園生そのうまで、土間の通庭とおりにわになりおりて、その半ばに飲井戸あり。井戸に推並おしならびて勝手あり、横に二個ふたつかまどを並べつ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは現世の園生そのうに咲く神から贈られた草花である。この世の凡ての旅人は、色様々なその間を歩む。さもなくば道は沙漠さばくに化したであろう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
紺碧こんぺきの海に対し、渚にはまるで毒茸どくたけ園生そのうのように、強烈な色彩をもったシーショアパラソル、そして、テントがところせまきまでにぶちまかれる。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
今日もカスタニアンと云う黄いろい薔薇ばらがざくりと床の間の花瓶かびんに差されている。銀杏いちょうの葉、すこしこぼれてなつかしき、薔薇の園生そのうの霜じめりかな。
晩菊 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
九天たかき神の園生そのう、われは草鞋わらじのままにてあがりこみ、たしかに神域犯したてまつりて、けれども恐れず、この手でただいま、御園の花を手折たおって来ました。
二十世紀旗手 (新字新仮名) / 太宰治(著)
後醍醐ごだいご天皇、大塔宮だいとうのみや、竹の園生そのう御方々おんかたがたは、申すもかしこき極みであり、楠木正成くすのきまさしげ新田義貞にったよしさだ名和長年なわながとしというような、南朝方の勤王の士や、北条高時ほうじょうたかとき足利尊氏あしかがたかうじ、これら逆臣の者どもが
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おなじたけ園生そのう、おなじ御子ながら、違うものかな」
一時あるときは先立ちて園生そのうをそぞろあるきしたまうことあり。さる折には、われ家を出づる時、心の急がざることあらざりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは現世の園生そのうに咲く神から贈られた草花である。この世のすべての旅人は、色さまざまなその間を歩む。さもなくば道は砂漠に化したであろう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
口の減らないじじいめが、何を痴事たわごとかしおる! 我が日本ひのもとは神国じゃ。神の御末みすえは連綿と竹の園生そのうに生い立ちおわす。海人あまが潮汲む浦の苫屋とまやしずまき切る山の伏屋ふせや、みなこれ大君おおぎみの物ならぬはない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お雪は細いに立てて唇を吸って招きながら、つかつかと出てたもとを振った、横ぎる光の蛍の火に、細い姿は園生そのうにちらちら、髪も見えた、ほのかに雪なす顔を向けて
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よき器は周囲を醇化じゅんかする。人々は気付かずとも、如何に工藝の花に、生活の園生そのうが彩られているであろう。そうして如何にすさみがちな人々の心が、それらによって柔らげられているであろう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
にぎやかだね、柳沢、」と窓の下の園生そのうから声を懸けたものがある。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)