唐変木とうへんぼく)” の例文
旧字:唐變木
「なあに、こんな唐変木とうへんぼくにあこのくれえでなけあ通じねえんで、大きな声は地声だ。やい人殺し兇状は——と来やがらあ。どうでえ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
酔狂もいい加減になさい。こっちは大事な商売をほったらかして来ているんだ。唐変木とうへんぼくめ。ばかばかしいのを通り越して腹が立ちます。
黄村先生言行録 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「まあ、鍵なんかかけるようになってさ! ご当人が盗まれそうで心配なのかしら! あけなさいよ、この唐変木とうへんぼく、起きなさいよう!」
「手をはなせば、人を落とすまえに、じぶんのからだがお陀仏だぶつだぞ。ざま見やがれ、唐変木とうへんぼく、突きとばせるものならやッて見ろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第一この僕にしたって、こんな所へ来るはずはないんですよ、もしも……(医者は歯をくいしばった)……もしも、僕がこんな唐変木とうへんぼくでなかったらね。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
するとまた垣根のそばで三四人が「ワハハハハハ」と云う声がする。一人が「高慢ちきな唐変木とうへんぼくだ」と云うと一人が「もっと大きなうち這入はいりてえだろう」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから中毒を起して世間の役に立たなくなる。物を言いかけても十分間ぐらい人の顔をジイッと見たきり返事をしないような禅宗カブレの唐変木とうへんぼくが出来上る。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この唐変木とうへんぼくめ、御好み通り傷の十は進上してお帰しするから覚えていろと心に決めてしまったのだった。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
莫迦莫迦ばかばか手前てめえはなんて唐変木とうへんぼくなんだろう。自惚うぬぼれが強すぎるぜ。まだ仕事も一人前に出来ないのに……
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
天下に、切っても切れない不死身ふじみ洒落しゃれてもこすってもわからない朴念仁ぼくねんじん、くすぐっても笑わない唐変木とうへんぼく、これらのやからの始末に困るのは、西郷隆盛ばかりではないらしい。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ふん、唐変木とうへんぼくの、薄野呂うすのろのこいつ等だって、馬鹿にすりゃあ、とんだ目を見るものさ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
あの二人からみれば、おれなんぞはぶまで、どじで、気のきかねえ唐変木とうへんぼくにみえるだろう、けれどもおれはおれだ、女房にゃあ済まねえが、おらあ職人の意地だけは守りてえ、自分を
ちゃん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
君は気ちがいどころか、つむじのまがった唐変木とうへんぼくだよ。まったく、ふざけた男だよ。
真青に澄切ってる、この湖に映じて、如何いかな風流気のない唐変木とうへんぼくも、思わずあっと叫ばずにはおられない、よく談話はなしにきく、瑞西すいつるのゲネパ湖のけいも、くやと思われたのであった、何様なにさま
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
「あッ、何をするのさ、人の手なんか握って、いけ好かない唐変木とうへんぼくだよ」
唐変木とうへんぼくっていうンだろう?」
泣虫小僧 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
武田伊那丸たけだいなまるだッて、忍剣にんけんとかいうやつだって、龍太郎りゅうたろうという唐変木とうへんぼくだって、てめえの味方は、みんなロクでもねえ山乞食やまこじきばかりだ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「金田さんでも恐れねえかな、厄介な唐変木とうへんぼくだ。かまこたあねえ、みんなで威嚇おどかしてやろうじゃねえか」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ナアーンだ。何遍云って聞かせてもわからない唐変木とうへんぼくだ。馬鹿叮嚀にも程がある。これから、こんなものを一々持って来なくとも、黙って勝手に這入って来いと、そう云え」
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おれが日の出屋のじいさまに頼んで金のくめんをして、家賃をかけあったり造作を入れたりして、そのおかげで寝起きができるようになったんじゃねえか、そうじゃねえのかい唐変木とうへんぼく
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お役目の上から、いかに日頃、側につかえていたって、その上役がやった不正いかさまを、だまって自分で背負いこんで、腹を切り、女房や子たちにまで、嘆きをかける唐変木とうへんぼくがあるものか。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「だからお前は妙痴奇林みょうちきりん唐変木とうへんぼく木槌頭さいづちあたまのおたんちんだってんだ。」
セレブリャコーフ あんな唐変木とうへんぼくとは、わたしは話もしたくないよ。
「やい、あの人殺し野郎の唐変木とうへんぼくは居るかい」
「出しておくれよっ。……ようっ。……出しておくれったらっ。……ばか野郎っ。唐変木とうへんぼくっ。……みんなつんぼづらしてけツかるな。出してくれなければ火をつけるぞう」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「へん人を馬鹿ばかにしてら、面白おもしろくもない。じゃ古賀さんは行く気はないんですね。どうれで変だと思った。五円ぐらい上がったって、あんな山の中へ猿のお相手をしに行く唐変木とうへんぼくはまずないからね」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「無理もねえ。」藤吉は、しずかに、「影じゃあそんなところまでわかるわけはねえからの。ことに、ちょっと間、ちらと眼にうつっただけじゃあ、これは、細けえことは訊くほうが唐変木とうへんぼくよなあ。」
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形 (新字新仮名) / 林不忘(著)
眼先の見えない唐変木とうへんぼくもあったもんだね。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そういえば、いまさださんが来て、注文したのは、この色じゃあないなんていっていたけれど、へんだねえ。お前さんにしろ、定公にしろ、この店は、唐変木とうへんぼくの寄り合いさ。いいかげんいやになっちまうよ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「嘘をいやがれ。どこに陽が当っている。唐変木とうへんぼくめ」
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐変木とうへんぼくめ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)