ぱた)” の例文
「ちょうどいい塩梅あんばいじゃございませんか。鬼の留守と言っちゃなんですが、その間にほこりの出るものなら、引っぱたいてみましょう」
ごまかせるものじゃねえよ。そこでみんなして、彼奴が松尾から手に入れた金を捲き上げてやるか、彼奴をひっぱたいてやるか、まあどっちかだね。
神棚 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ね、とろとろっとすると、夢でおれをひっぱたきゃあがるんだよ、まったく! 然もそいつが誰だと思う? とても君なんかに見当がつくもんか。
「うまいぞ市若!」と大黒の次郎は、つづいて颯と飛び出すと、小手を揮って眼潰しだ、侍の眼の辺をひっぱたいた。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は無理無躰にこの子を折檻する西洋のお内儀さんと、いつまでも泣かずにヒツぱたかれてゐるしぶといネルリとを、ありありと目にするやうな気がした。
愛の詩集:03 愛の詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
そこで彼はかじを引張ったり、鞭でひっぱたいたりして一生懸命に馬を出そうとするけれど、ねた動物は却って膝を折りまげて、どたりと横っ倒しになった。
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
長々と欠伸あくびでもしながら……あの紳士の横ッつらぱたいたらドンナ顔をするだろう……この町に風上から火をけて、火の海にしてしまったらドンナに綺麗だろう。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「知れたことよ、郡代前へ出向いて行って上布屋をうんと引っぱたいてこよう——。」
「旦那様、その野郎は容易のことじゃ口を割りません。思い切り引っぱたいて見ましょう。ちょいと、あっしにお貸しなすって」
羽搏きのようにひっぱた
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そいつは、考えることも、迷うこともあるものか、お村とかいう女を縛って、ともかく八丁堀の旦那にぱたいて貰うんだ」
「待ちなよ八。口惜くやしがるのはお前の勝手だが、煙管きせる雁首がんくび万年青おもとの鉢を引っぱたかれちゃ、万年青も煙管も台なしだ」
「家の中を嗅ぎ廻っているじゃありませんか。証拠なんかるものですか、縛って引っぱたけば、手もなく白状しますよ」
「なアに、ほんの煙草一服の間でさ。——ポンポンポンといきなり四つ五つ引っぱたいて、引っ組んで転がって——」
番所で引っぱたかないばかりに責めてみましたが、知らぬ存ぜぬの一点張で、筋の通ったことは一つも白状しません。
「馬鹿ッ、この野郎容易のことじゃ本当の事は言うまい。死相を占っただけでも、遠島か追放はまぬかれっこはねえ。番所へつれて行って、存分に引っぱたけ」
この娘をしばって行っていきなり二三ぞく引っぱたいてみて下さいよ。泥を吐かなかったら、お詫びをしますから、さ
お行儀がよくなったせいではなく、息が切れて、しばらくは後が続かなかったせいでしょう。どもりが疳癪かんしゃくを起したように、一生懸命しきいを引っぱたいております。
「驚くことは無いよ、二三日続け様に引っぱたかれてスッカラカンさ、大きな面をしていて百もねエんだ、沢山とは言わねエ、ほんの少しばかり貰い溜めを貸してくれ」
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
無闇に縛って引っぱたいて口を割るというわけにも行かず、この上は第三段の雪駄から、手繰って行くか、四人の出入りを監視して、その後をけさせる外はありません。
玄関へ廻って、表戸を引っぱたくうちに、平次は早くも裏口から飛び込み、面くらっている女を一人沈黙させて、奥の部屋に飛び込んで、脱ぎ捨てたあわせを一枚さらったのです。
こんな社会の消息なら、誰よりもよくそらんじて居る千種十次郎は、いろんな事情を考え乍ら、乗ったタクシーの尻を引っぱたくような心持で、代官山の長島博士の門口へ着きました。
音波の殺人 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
お松はあのギヤマンの鏡を、時次の野郎に貰ったに相違なく、時次はあれを平右衛門町の路地で拾ったと言っていたが、二三十引っぱたかれると、苦もなく恐れ入ってしまいましたよ
「いやなじゃありませんか、親分、くくって二三ぞくぱたいてやりましょうか」
ガラッ八は吐月峰はいふきをやけに引っぱたくと、煙管きせるを引いて物語らんの構えになります。
庭を突っ切って、垣を飛び越えると、平次はいきなり雨戸を引っぱたきました。
ふてえ野郎だッ。金の茶釜がなくなった申し訳に、自分で引っ掻きなんかこしらえやがって、——浪人者に斬られたもないものだ。本当の事を申上げないと、二三百引っぱたいて、伝馬町へ送るぞ」
万七は子分の清吉を顧みてニヤリとしながら、自棄やけ煙管きせるを引っぱたきます。
十人が十人、有金引っぱたかせられて、娘がいやがるのも構わず、ここまで送って来る、——それからあくる日知らん顔をしてここへやって来て、娘の身許を訊くとね、——筋書は大抵決ったものさ
「親分、この通りだ。しょっ引いて行って、二三百引っぱたきましょうか」
幕末の奉行などは自分で罪人を調べた者はほとんどなく、与力も調べの出来るのは余程の傑物えらもので、大抵は岡っ引がぱたきながら調べ、お白洲は型だけのものであったとさえ言われております。
御家人の南久馬と旗本の次男の三津本弦吉げんきちの四人ですが、權三郎を除けばあとは立派な二本差で、無暗に縛つて引つぱたいて口を割るといふわけにも行かず、此上は第三段の雪駄から、手繰つて行くか
「この野郎ですよ、親分、思い切り引っぱたいてみましょうか」