厄年やくどし)” の例文
このお話は、その隠密の役目を間宮鉄次郎という人がうけたまわった時のことで、間宮さんはこの時二十五の厄年やくどしだったと云います。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
厄年やくどしの男女が特に警戒する以外に、信州では鬼の目団子だんご、もしくは鬼の眼玉と称して、三つの団子を串に刺し、戸口にはさんでおく風もある。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「このごろ、どうも、養父養母が続いて死に、わしも、何だか心細くて、からだ工合いが変になった。俗に三十は男の厄年やくどしというからね、」
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「———今年のうちにもう一遍出て来て貰うようなことがあって欲しい思うてるねんで。来年は雪子ちゃん厄年やくどしやさかいにな」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
厄年やくどしの男女がふめば厄難をはらうという、四十二段、三十三段の石段を上ると、日和佐川のはけ口から、をえがいている磯の白浪、ひと目のうちだ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千葉県にて東京方面より伝わってきたと申しているが、今年は婦人の厄年やくどしに当たり、若い婦人は必ず病気にかかる。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
然り身体が大切だ、だから帰郷したくないのだ、妹が肺病だ、伝染したら何うする⁈ 己は今年は二十五の厄年やくどしだ、ひよつとすると伝染するかも知れぬ、恐しい!
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
初めて一緒に江戸への旅をして横須賀よこすか在の公郷村くごうむらに遠い先祖の遺族をたずねた青年の日から、今はすでに四十二歳の厄年やくどしを迎えるまでの半蔵を見て来た寿平次には
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此時四十二の厄年やくどし、家柄も人品も不足のない人物ですが、少し疳癖かんぺきの強いのがきずで、若い時分には、それでいろ/\問題を起しましたが、四十を越すとさすがにそれも納つて
そうして私は世俗で云う厄年やくどしの境界線から外へ踏み出した事になったのである。
厄年と etc. (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
前年除夕の作に「不材空愧逢昭代。多難猶欣過厄年。」〔不材空シク愧ヅ昭代ニ逢フヲ/多難猶よろこブ厄年ヲユルヲ〕というを見れば、甲辰の年には二十五の厄年やくどしに一歳を加うべきである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「やはり厄年やくどしということはあるものか、一昨年あたりからどことなく躯が不調で、そのうえまた今年の正月は、つまらぬことでけがをしたりしたものだから、江戸番も延ばしている状態です」
土岐さんも丁度厄年やくどし位だったじゃありませんか。いくら懇意こんいにしていても、つい目の前で楽しんでいる所を見せられちゃ、一寸妙ないたずら気も起りまさあね。それに腕のいい人でしたからね——
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
厄年やくどしでございますよ。お気をつけ下さい」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「はい、厄年やくどしでございます」
「ほんとうは私はもう長く生きていられない気がしているのでございますよ。この厄年やくどしまでもまだ知らない顔でこのままでいますことは悪いことと知っています。以前からお願いしていることですから、許していただけましたら尼になります」
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
雪子さんが今年厄年やくどしになられると云うことばかり頭にあったので、あんなにお若く見えるとは思ってもいなかった、あれなら世間は廿四五で通るから
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
また、民間にて厄年やくどし厄日やくびというものがある。通例、男子は二十五歳、四十二歳、六十一歳を厄年とし、女子は十九歳、三十三歳、三十七歳を厄年とす。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
生まれがお宮参りに着るのをミヤマヰリゴ(美作みまさか)、女がお歯黒はぐろを始めてつける日に着るのがカネツケゴ(北美濃きたみの)、年寄が厄年やくどしの祝に着るのをヤクゴ(讃岐さぬき)というのを見ると
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
母親のない幼い子供らをひかえるようになってから、三年もたつうちに、私はすでに同じ思いに行き詰まってしまった。しかし、そのころの私はまだ四十二の男の厄年やくどしを迎えたばかりだった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「うむ。月日のたつのは全く早いな。来年はおれもいよいよ厄年やくどしだぜ。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と、今更のように幸子の耳元で嘆声を発したが、ほんとうに、これを三十三の厄年やくどしの人と見る者はないであろう。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
古来、民間に厄年やくどしと称して一般に忌み嫌うとしがある。例えば十九歳、三十三歳、四十二歳、四十九歳などを厄年と唱えて、厄払いをすることになっておる。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
その他厄年やくどし前厄まえやくの者が厄けのために何かすることがあるか。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今年は雪子の厄年やくどしに当るので、何とかして去年中にと思っていたのが空しくなったこと、せめて今年の節分までにはと云っていたその節分も、もう一週間の後に迫ったこと、そして
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
不成立に終ったとしてもこれを切掛きっかけにあとの話が出て来そうだけれども、これを断ったら、又当分何処からも持って来なくなるかも知れない、まして今年は雪子が厄年やくどしなのではないか
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)