利益ため)” の例文
信斎は自分の学問の底をはたいて、色々利益ためになりさうな名句を拾ひ集めては比べてみたりした。そしてやつと出来上つたのが、ひらの蓋に
歌子は、惣七の利益ためになることなので、すぐ引き受けたのだったが、もうひとり助勢を求めて、大槻藩の麦田一八郎の名をあげたのだった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「講座」は閉口あやまる。利益ためには成るのだろうが、七六しちむツかしくて、聞くのに草臥くたびれる。其処へ行くと、「ニュース」は素敵だ。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
すべて竜神りゅうじんには竜神りゅうじんとしての神聖しんせい任務つとめがあり、それが直接ちょくせつ人間界にんげんかい利益ためになろうが、なるまいが、どうあっても遂行すいこうせねばならぬことになっている。
「告白書は私のほうに用意が出来ています。簡単に署名なすった方がお利益ためですよ、ノウスカットさん」
土から手が (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
けれど平素いつも利益ためになつてる大洞さんのお依頼たのみと云ひ、其れにお前も知つての通りの、此の歳暮くれの苦しさだからこそ、カウやつて養女わがこの前へ頭を下げるんぢやないか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
寛大な判決を下して欲しいと思うなら、ここで自白する方が、お前の利益ためにいいだろうがなア
青蠅 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
第一こんなことを幾ら書いても、国家の利益ためには少しもならず、第二に……いや、第二にも矢張り利益ためにはならない。まったく何が何だか、さっぱりわたしにはわからない……。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
し情談をいいかけられたら、こう、花を持たせられたら、こう、なぶられたら、こう待遇あしらうものだ、など、いう事であるが、親の心子知らずで、こう利益ためを思ッて、云い聞かせるものを
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
世の中には結構な音楽よりも、とぼけて世間話でもて聴かせた方が、ずつと利益ためになる人があるのを検校はよく知つてゐた。
少し我達おれたち利益ためになることをいふと、『中止ツ』て言やがるんだ、其れから後で、弁士の席へ押しかけて、警視庁が車夫の停車場きやくまちに炭火を許す様に骨折てほしいつて頼んでると
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
じぶんの利益ためにならないことが、両方の口から両方の耳へ交換されるに相違ないと思った。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
隣人の利益ためをはかり、しかも友達を助けることも怠らないという——そういう風なことはちっとも考えないで、ただもう、人を押しのけよう押しのけようとしておいでなさるだ。
「もう一度注意するが、強情を張ると利益ためにならんぞ。多分激昂して発作的に殺したんだろう。この屍体を御覧。この惨たらしい死態しにざまを見て気の毒とは思わんか。後悔もしないか」
青蠅 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
この言葉は日本でもそのまゝ真理で、実際牧師のお説教を聴くよりも、一寝入ひとねいり寝ておきた方がずつと利益ためになる事が多い。
其れで一週間程で帰るつもりだから、其間に松島との縁談、く考へて置いて呉れ、わしは決してお前の利益ためにならぬ様なこと勧めるのぢやない、——兼てお前は別家させるつもり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
しかし、そんなことをなすっても、何のお利益ためにもなるまいと思いましてね。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
利益ためを思えばこそいうだよ。彼女あれなんかは若い盛りでのう、まだ面白い思いがしたい年頃じゃ。土曜日っていうと、市場へ行くのに、しゃれた服装みなりもしたいじゃろ。誘惑まどわしにかかるのは早いもんでな。
麦畑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「何をお利益ためごかしに! おおきにお世話だッ!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
男にせよ、女にせよ、連添つれそひに死別れてから、四十年も生き延びてゐると、色々いろんな面白い利益ためになる事を覚えるものだ。
だから、あの女はそりゃ熱心に家の利益ためを計っていますよ
無駄骨 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
酒といふものは、禁酒論者が言ふやうにまつたく肉体からだには良くないらしいが、その代り精神には利益ためになる事が多い。
保太郎氏は愚者のむれからおいてきぼりにされた図体を小刻みにゆすぶりながら「僕の画を買つておくのは、田地を持つてゐると同じで、屹度孫子まごこ利益ためになるよ。」