伝吉でんきち)” の例文
床屋とこや伝吉でんきちが、笠森かさもり境内けいだいいたその時分じぶん春信はるのぶ住居すまいで、菊之丞きくのじょう急病きゅうびょういたおせんは無我夢中むがむちゅうでおのがいえ敷居しきいまたいでいた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
伝吉でんきちんで、「時にわたし今度こんど下野しもつけから上州じやうしうはうくについて、おまへともれてかうと思ふが、面白おもしろくもなんともない、ひどい山の中へくんだが、くかえ」「それは有難ありがたい、 ...
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
八兄哥、この三軒長屋は、右隣が魚屋の伝吉でんきちで、左隣は蝮の銅六だ。
「ま! 伝吉でんきちさん」
嫁取り二代記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
伝吉でんきち駕籠かごなかはなあたまッこすってのひとり啖呵たんかも、駕籠屋かごやにはすこしのもないらしく、駕籠かごあゆみは、依然いぜんとしてゆるやかだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
吉原よしわらだといやァ、豪勢ごうせいびゃァがるくせに、谷中やなか病人びょうにんらせだといて、馬鹿ばかにしてやがるんだろう。伝吉でんきちァただの床屋とこやじゃねえんだぜ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)