ふさ)” の例文
いくらか萎びかかつたその肌に、山の渓あひに山雞やまどりの雌のやうに腹這ひふさつてゐる雲の匂を嗅ぐことができたやうに思つた。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「見やしませんけれど、御覧なさいな。お茶台に茶碗がふさっているじゃありませんか、お茶台に茶碗を伏せる人は、貴下きらいだもの、父様も。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
フトまた云合せたように一斉いっせいにパラパラとふさッてしまう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と、まばゆそうに入日にかざす、手をるる、くれないの露はあらなくに、睫毛まつげふさって、霧にしめやかな松の葉よりこまかに細い。
ゆめらすやうな、朦朧まうろうとした、車室しやしつゆかに、あかち、さつあをふさつて、湯気ゆげをふいて、ひら/\とえるのを凝然じつると、うも
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それ、湯気ゆげつたりふさつたり、ぼたんかゝつたり、みゝいたり、はないたりする。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「はあ。」と烏帽子がふさる。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)