仮橋かりばし)” の例文
旧字:假橋
河原の中程にあった地蔵堂は引き上げられて、やや離れた竹藪たけやぶ仮橋かりばしの間に置かれてあったが、その藪へも水はひたひたと寄せているのでありました。
爾時そのとき仮橋かりばしががた/\いつて、川面かはづら小糠雨こぬかあめすくふやうにみだすと、ながれくろくなつてさつた。トいつしよに向岸むかふぎしからはしわたつてる、洋服やうふくをとこがある。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「まだ仮橋かりばしのままでやってるんだから、呑気のんきなものさね。御覧なさい、土方があんなに働らいてるから」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大和橋やまとばしはそれにかかつた唯一の橋です。水に流されて仮橋かりばしになつて居たことが二度程ありました。仮橋は低くて水とれでしたから、子供心にはその方を渡るのが面白かつたのでした。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
河原づたいから三本木の仮橋かりばしを東へ渡って、少し町屋を離れると、岡崎のなわてにかかるさびしいやぶのあちらこちらにかまぼこ小屋の影が幾つか見えはじめた。お千絵はもう息がつづかなくなって
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「六郷川ごうがわ仮橋かりばしわたってきなすったのですね。」
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまたゞひろなか母様おつかさんと、やがて、わたしのものといつたら、この番小屋ばんこや仮橋かりばしほかにはないが、その時分じぶんこのはしほどのものは、やしきにはなかひとツの眺望ながめぎないのであつたさうで、いまいちひとはるなつ
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)