仔牛こうし)” の例文
とねんをおして、四にん弟子でしっていきました。かしらも、もうじっとしておれなくて、仔牛こうしをひきながら、さがしにいきました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
優しい眼をした黄と白の斑牛まだらうしが寝そべっていて、可愛い仔牛こうしがいたが、生きた牛のそばにいった事はないし、臆病な私はこわかった。
仏教では、これを「愛見の大悲」といっておりますが、ほんとうの慈悲は、盲目的な愛、母牛が仔牛こうしめるような、そんな愛ではないのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
勝山城下のほうから峠を越して来たらしい、仔牛こうしほどもある大きな赤毛の犬で、尻尾しっぽがくるっと巻き上っていた。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ゆかべたには仔牛こうしが、病人と同居しているし……仔豚までそのへんを、うろうろしている始末なのさ。
荒い格子こうしおりに閉じこめられて嘆いてる仔牛こうし、青っぽい白目をしてる飛び出した大きい黒い眼、薄赤い眼瞼まぶた、白い睫毛まつげ、額に縮れてる白い尨毛むくげ、紫色の鼻、X形の足
時には、道の反対側で草をっていた仔牛こうしまで、親の逃げる方へ飛び出してかれそうになる。運転手はあわててブレーキをかけながら、「馬鹿!」と大声でどなりつける。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
或る時はほふった仔牛こうしを沢山積んで歩いていた。仔牛のしかばねの下半身が一列にぶらさがっている。下肢と尾が一様の或る律動で揺れている。その上段には仔牛の首の方が一列に並びいる。
玉菜ぐるま (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
彼ら三人は暗夜の中に各自それぞれ光をまといながらへんぽんとして舞い踊るうち、彼らの衣裳はことごとく落ちて、ただ見る三匹の仔牛こうしほどの野狐やこが、後脚二本で土に立ち、前脚二本で拍子を取り
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
悲しげにうろついている仔牛こうしの声が耳につく。すぐ側の陣幕から顔を出した将が
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くろ仔牛こうしが鳴き出す
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
老人ろうじんはいいわけをしてあやまりました。そして、仔牛こうしはあずかっておくことにして、下男げなん物置ものおきほうへつれていかせました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
和助という若者は少しばかり不服そうに、「鋳物師谷いもじやの隠居は、その場にいて拝見したと申しております、仔牛こうしほどもある大猪で、危なく殿さまが牙にかかるところを」
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私は自分をねこや犬や小鳥や鶏や仔牛こうしであると想像してみました。そういう動物の欲望を自分に感じました。その毛や羽を自分にもしばらく生やしてみたい気がしました。
旦那衆だんなしゅうっちゃんが、下男げなんについてあそびにて、下男げなんにせがんで仔牛こうしたせてもらったのかもれません。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)