亭主ていし)” の例文
彼様なやさしげな人はねえ、おれがに亭主ていしを持たせるなればア云う人を亭主に持度もちたいと云って、内所で云う事が有ったけえ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『ハイ私は生一本きいっぽんで通します』ッて……マアあきれかえるじゃアないかネー文さん、何処の国にお前、尼じゃアあるまいし、亭主ていし持たずに一生暮すもんが有るもんかネ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
黒縮くろちりつくりでうらから出て来たのは、豈斗あにはからんや車夫くるまやの女房、一てうばかりくと亭主ていしが待つてて、そらよと梶棒かぢぼう引寄ひきよすれば、衣紋えもんもつんと他人行儀たにんぎようぎまし返りて急いでおくれ。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
今になって魂消たまげてそんなことをいって来てもだめだよ、若草は勤めのうちでもほかのお客へ出て肌をらねえ、われうちの伊之助を亭主ていしと思って、夫婦約束の書付まで取替わせた仲だから
通抜とほりぬけ無用の札を路次口ろじぐちつて置くのは、通抜とほりぬけらるゝ事を表示へうしするやうなものだと言つた人があるが僕も先刻せんこく余儀よぎなき用事で或抜裏あるぬけうら一足ひとあし這入はいるとすぐにめうなる二つの声を聞いた亭主ていしいわ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「働きもん亭主ていしに持ッて、洋服なとなんなとこせえて貰うのサ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もとが他人じゃアが年を取って居るから亭主ていしに成ろうとは云わぬが、たった一度でも□触れて居れば、是から先お前が亭主を持とうとも、どう成っても其処そこが義理じゃ、追出しもせまい
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私のようなお多福でも亭主ていしが有りますもの、お前さんのような粋なお侍とさしでお酒なんかを飲むと、親指これ嫉妬やきもちを焼いて腹を立ちますよ、お前さんがもっと男が悪ければいけれども
夜明よあかしに這入って酒え飲んで、転がっちゃった、処がその客は私ア縁が切れては居るが、かたづいているいもと亭主ていしだ、それとは知らねえでおまはんから何うも………あとは妹一人で仕様が
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何処どこかで一緒になったで口でもきゝ合った訳だんべえ、それでまア娘が気に、ア云う人を何卒どうか亭主ていしたいとか内儀かみさんになりてえとか云う訳で、心に思ってもあにさまがかてえから八釜やかましい事云うので
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)