亥刻よつ)” の例文
「昨夜亥刻よつ少し過ぎ(十時過ぎ)小僧の乙松おとまつ離屋はなれの前で嫁のお袖に逢つたさうですよ。月は良かつたし、間違ひはないつて言ふが」
お客の帰った跡の取片付けを下役に申付けまして、自分は御前をさがり、小梅のお屋敷を出ますと、浅草寺あさくさ亥刻よつの鐘が聞えます。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
扨て傳吉は其夜そのよ亥刻よつすぎに我が家へ歸りければ女房叔母ともに出で立ち今御歸りなされしや金子は如何にとたづぬるに傳吉さればお專殿は留守にて分らず歸りを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「これはこれは、藤波先生。……どうも、あなたは人が悪いですな。ちゃんと亥刻よつとお約束がしてあるのに、こんなお早がけにおいでになるんで、だいぶ、こちらの手順が狂いましたよ」
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
仕事場に籠ると見せて、戌刻半いつゝはん(九時)少し前に脱け出し、小夜菊を殺して仕事場に戻り、亥刻よつに誘ひに來る約束のお咲を待つたのだ
唇へ差した余りの紅を耳たぶや眼の間へ差して、髪を掻揚げてしまい、着物を着替えたりするとボーンと亥刻よつになります。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
晃々くわう/\とさしのぼり最早夜の亥刻よつ時分共思ふ頃やゝ原中はらなかまで來りしに最前より待設けたる雲助共松のかげより前後左右に破落々々ばら/\あらはれ出でヤイ/\小童子こわつぱまて先刻さつき松の尾の酒屋ではようも/\我等を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「おつかい通り、きっちり亥刻よつ(午後十時)にお伺いするという口上でした」
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
小僧の長吉と、下女のおかくを呼んで訊くと、お村が外へ出たのは亥刻よつ過ぎらしく、外から男が合図していたというので口が合います。
長「お前さんが帰るならわっちも一緒にけえりやすが、亥刻よつまでにけえればいんでしょう、何うなすったのです」
立出九郎兵衞は殊の外の酒機嫌さけきげんにて踉々よろ/\蹌々ひよろ/\とし乍ら下伊呂村しもいろむらはづれへ來掛きかゝりし頃ははや亥刻よつに近くて宵闇よひやみなれば足元もくらくお里は大いに草臥くたびれしと河原の石にこしを掛るに九郎兵衞惣内も同く石にこし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
丁度亥刻よつ頃、堅く絞つた手拭で身體を拭いてゐると、後ろからそつと忍び寄つて、いきなり井戸の中へ若旦那を突き落した奴がある
仙「ナニ大丈夫でえじょうぶでござえやす、遅くも今夜の亥刻よつ時分までにけえって来て、芽出度めでたく祝いをしましょう」
振つて押込んだんだぜ。亥刻よつ過ぎに泉屋へ入らうとする者があつたら、出前持でも、飛脚ひきやくでも構はねえ、縛り上げて泥を吐かせることだ
町の者は亥刻よつになると屋敷内へ入れんように致します。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ならねえよ。疑が手前に掛りさうだと思ふなら、飛離れた遠方へ行つて、亥刻よつ(十時)前は本郷神田界隈に寄り付かねえ工夫をしろ」
林「きアしない、亥刻よつまではかないよ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女はそんな事も知らぬ様子で、賑やかなところを通るように、——白金へ辿たどり着いた時はもう亥刻よつ(十時)近い頃でしたでしょう。
「夜更けと申してもまだ亥刻よつ前で、それに唯ちよいと、氣分がどうか訊き度かつたので——へエ、ひどくお疲れのやうでしたから」
芝口の仕事場に籠つて亥刻よつ(十時)まで仕事をしたと言つて居るのに、今日行つて見ると、作つた草鞋が二十足も綺麗に用意してゐる。
甲子太郎の縄を解いてやるように、平次は猪之吉を説き伏せて、室町の小法師に帰って来たのは、その晩の亥刻よつ(十時)少し前でした。
亥刻よつ(十時)少し前に、お隣の部屋からお姉樣が——お寢みなさい、私はもう寢みましたから——とお聲をかけて下さいました」
一と通り検屍けんしが済んだのはもう亥刻よつ(午後十時)近いころ、平次は紙入と煙草入だけを、二三日借りることにして、現場を引揚げました。
女はそんな事も知らぬ樣子で、賑やかなところを通るやうに、——白金へ辿り着いた時はもう亥刻よつ(十時)近い頃でしたでせう。
昨夜の戌刻いつゝ半過ぎ、いや亥刻よつ時分かな、中がシーンとして居るので、お勝手から入り込むと、師匠は稽古舞臺の上で死んで居た。
「何んか御用があるとかで、そは/\してをりましたが、亥刻よつ(十時)少し前——皆樣より一と足先に歸つたやうでございます」
もう亥刻よつ(十時)過ぎ、江戸の街も静まり返って、乱れる自分達の足音だけが、物々しい響きを、町から町へ伝えて行きます。
心付けと、十手と、詫言わびごとと、脅かしと、硬軟いろいろに使いわけて、亥刻よつ半(十一時)頃、廻って来たのは、御隠殿ごいんでん裏でした。
明日は殿様江戸表出立という騒ぎ、邸内は宵までごった返して、亥刻よつ半(十一時)頃からは、その反動でピタリとしずまります。
「お米さんが湯へ行くと間もなく、私の方も店を閉めてしまひました。目白のかね亥刻よつ(十時)を打つと、何時でもさうするのですが——」
「お米さんが湯へ行くと間もなく、私の方も店を閉めてしまいました。目白の鐘が亥刻よつ(十時)を打つと、いつでもそうするのですが——」
「ヘエ、昨夜もその前の晩も、亥刻よつから夜中過ぎまで、引っ切りなしに算盤の音がして、うるさくて、眠られませんでしたよ」
「何しろ日が暮れる前からやつて居るでせう。亥刻よつ近くなつて、好いかげんトロリとしてゐると、川向うにチラと明るいものが出て來た——」
「ならねえよ。疑いが手前てめえに掛りそうだと思うなら、飛離れた遠方へ行って、亥刻よつ(午後十時)前は本郷神田界隈に寄り付かねえ工夫をしろ」
亥刻よつ(十時)前だつたと思ひます。お床のお世話をして、晩酌の膳を引いて、二階から降りた後で、主人は梯子段の上から、私へ明日の用事を
「宵に來た相ですが、亥刻よつ頃出かけて、暫らく經つてからまた鎌倉町へ歸り、夜があけてから、本町の店へ行つたさうです」
いきなり八五郎の首つ玉にかじり付く女を、ようやく引離して、梯子から突き落すやうに、寒い表へ送り出したのは、もう亥刻よつ(十時)過ぎでした。
それつ切り二人は逃げ出し、お萬は一寸誤魔化ごまかしに湯へ行つて、亥刻よつを過ぎたのに、『戌刻いつゝ半でせうね』と番臺で念を押した
平次も八五郎も悉く充ち足りた心持で、醉顏をしめつぽい夜風に吹かせ乍ら、兩國橋の上にかゝると、丁度金龍山の亥刻よつ(十時)の鐘が鳴ります。
相手が若くて綺麗で、夜の亥刻よつ過ぎ、冷たい大地の上を這ひ廻つてゐると、あつしだつてツイ聲をかけて見たくなるでせう
亥刻よつ半(午後十一時)頃、フラリと帰って来た新吉を、有無を言わせず引っくくって、房五郎の家の現場へ伴れて来ました。
一と通り檢屍が濟んだのはもう亥刻よつ近い頃、平次は紙入と煙草入だけを、二三日借りることにして、現場を引揚げました。
「今晩の幽霊退治に、綾吉だけ出て来なかったので、亥刻よつ時分に、力兄哥に誘わせましたが、用事があるんだって、とうとう来ませんでしたよ」
「お萩さんはプリプリしながら、亥刻よつ少し前に帰って行き、それから煙草の二、三服ほどもして、お房さんも帰りました」
亥刻よつ過ぎだったそうです。お六に言わせると、お房は浮気者で、時々夜中に抜け出しては、男と逢引してるそうですが」
「昨夜戌刻いつゝ(八時)過ぎから亥刻よつ(十時)前まで、ざつと半刻の間、お孃さんは本當に庭で源三郎と話して居たのですね」
ちょうど亥刻よつ(十時)ごろ、堅く絞った手拭で身体を拭いていると、後ろからそっと忍び寄って、いきなり井戸の中へ若旦那を突き落した奴がある
亥刻よつ半といふと半夜よなかだが、御主人は何んだつて、そんな場所へ行つたんです。話の樣子では、灯も無かつたやうだが」
夜中に拔け出したには違ひあるまいが、お島さんが松井町の妹の家を脱け出したのはまだ亥刻よつ前(十時)で、火事は曉方近い丑刻半やつはん(三時)ですよ
亥刻よつ(十時)過ぎでしたよ。それから二三軒顏を見せて歩いて、落着いたのは花本の玉の井のところ、嘘だと思つたら、行つて訊いて見て下さい。