二筋ふたすじ)” の例文
現世げんせ夫婦ふうふならあいよくとの二筋ふたすじむすばれるのもむをぬが、一たん肉体にくたいはなれたうえは、すっかりよくからははなれてしまわねばならぬ。
品川堀の外には、彼が家の下なる谷を西から東へ流るゝ小さな田川と、八幡田圃たんぼを北から南東に流るゝ大小二筋ふたすじの田川がある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「たとえ、とおいたって、ここから二筋ふたすじ線路せんろわたしまちまでつづいているのよ。汽車きしゃにさえれば、ひとりでにつれていってくれるのですもの。」
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、二筋ふたすじの道を見廻していると、やや上りになった檜林ひのきばやしの暗い蔭に、一人の女が泣いている。檜にもたれて泣いている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真昼間まっぴるま、向う側からそっすかして見ると、窓もふすま閉切しめきつて、空屋に等しい暗い中に、破風はふひまから、板目いためふしから、差入さしいる日の光一筋ひとすじ二筋ふたすじ裾広すそひろがりにぱつとあかる
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二人は顔を見合わせると、思い切ってドアを押開けました。二筋ふたすじの手提電灯の光に照らされて
水中の宮殿 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
三四郎はついと立って、鞄の中から、キャラコのシャツとズボン下を出して、それを素肌すはだへ着けて、その上からこん兵児帯へこおびを締めた。それから西洋手拭タウエル二筋ふたすじ持ったまま蚊帳の中へはいった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
の如き深夜の大道を、二筋ふたすじの白い光が雁行がんこうして飛んだ。追駈おっかけである。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
此の日向見川ひなたみがわ荒川あらかわと云うのが二筋ふたすじに別れて来ます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
のものがたりの起つた土地は、清きと、美しきと、二筋ふたすじ大川おおかわの両端を流れ、真中央まんなかに城の天守てんしゅほ高くそびえ、森黒く、ほりあおく、国境の山岳は重畳ちょうじょうとして、湖を包み、海に沿ひ、橋と、坂と
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)