乱麻らんま)” の例文
あなたこそ魔魅跳梁まみちょうりょうを退けて、暗黒の国に楽土をて、乱麻らんまの世に道を示し、塗炭とたんの底から大民を救ってくれるお方にちがいない
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
細君と乱麻らんまを編んで作った牛衣ぎゅういの中に寝るというようなみすぼらしい生活をしていたが、細君が小言をいうので困っていた。
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
乱麻らんまのような帝国主義の日々の目前の利害と延命のための権謀術数の間をぬって、どう運転され、たたかわれ、勝利を占めてゆくかという、現実のいきさつだと思うんだ。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
見る見る百人長は色激して、砕けよとばかり仕込杖を握り詰めしが、思うこと乱麻らんま胸をきて、反駁はんばくいとぐち発見みいだし得ず、小鼻と、ひげのみ動かして、しらけ返りて見えたりける。時に一にんの軍夫あり
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
乱麻らんまを焼き切る
というて、何処いずこを見まわしても、乱麻らんまの時相、小国は小国なりに、大国は大国なりに、足もとの闘争のみに追われている時代。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見る見る百人長は色げきして、くだけよとばかり仕込杖を握り詰めしが、思ふこと乱麻らんま胸をきて、反駁はんばくいとぐち発見みいだし得ず、小鼻と、ひげのみ動かして、しらけ返りて見えたりける。時に一人の軍夫あり
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
諸国乱麻らんま、王城の地とて、いつなん時の変あろうも測られませぬ。信長あることを、お覚えおき下さればありがとうぞんじます
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういう特異な人物は、そう沢山にあろうはずはないが、どんな乱麻らんま暗澹あんたんていしている時流の中でも、かならずどこかにいることはいるのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乱麻らんまの世に会うてぜひもないが、この子だけは、芸能のみちに名をあらわすほどな者になし給え、修羅殺伐しゅらさつばつ六道ろくどうの外に立つ者となさしめ給えと、親心
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここの旗、ここのとりで、何は失うとも、守りぬかねばならぬ第一は子どもだからな。大人どもはついこんな乱麻らんまを世に起してしまったが、さりとて、これぎりの世でもない。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
救いがたい人間性と申すべきか、平和の退屈さから、百八の魔星をよみがえらせて、ふたたび際限ない乱麻らんまの地上を眼に見たくでもなったものやらと思われますわい。……ああ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なくしたら、さなきだに俺が俺がの天下は、のべつ乱麻らんま乱世のくりかえしだろ。それを恐れる
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下って足利氏あしかがしが世を暴奪ぼうだつなし終った乱麻らんまの時代となってはしのび上げるも畏れ多いことながら、後村上天皇は、男山御脱出以来、軍馬の間を彼方此方あちこち御輦みくるま漂泊さすらいを経られて
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当今、乱麻らんまの世にあたって、その仁、その勇、その徳、その信、その策、真に漢の高祖のような英傑を求めたなら、わが主君、曹操をおいてはほかにあろうとも思われません。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしがたち頃から近年にいたるまで、世は乱麻らんまのごとく、武門の道も、生きる道も、洪水こうずいのような濁流だくりゅうおかされ、正しく道をとろうにも、正しく進めず、正義にあろうとすれば
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
応仁の乱麻らんまから、割拠かっきょしていた群雄のおびただしい複数が、徐々に単位に近づき、信長によって、飛躍的にそれがひとつに達しようとしたとき、忽然こつぜんと彼は世を去り、彼の死は加速度に
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
都もひなも、公卿も武門も、またのりの山門まで、頼む木蔭などはどこにもない。やがては、我執がしゅうと我執の争いが、乱麻らんまの修羅地獄をこの地上に呼びおろして来るのは、眼に見える心地がする
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乱麻らんまの状にて、余賊よぞく、容易に平定せず、さきに新田義貞からも、しきりな急使を受けておりますものの、いかにせん賊徒平定のはかりに、日夜、心をくだくのみで、遅々ちちと、延引えんいんいたしおりますこと
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この乱麻らんまの世の中にあって、いつのまにか、幕府権力にも屈しない「士道」を生み、それを磨き合っている風が勃々ぼつぼつとして、ここに在る、石母田外記一人を見ても、分る気もちがするのであった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乱麻らんまの時代、権謀の多い君臣の内外。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)