中枢ちゅうすう)” の例文
旧字:中樞
晩年近く、全く時代の中枢ちゅうすうを離れ、寂寥せきりょうの日々を送られたという帝は、畢竟ひっきょう生涯を大伽藍のために燃焼しつくし給うたのであろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
こういう機密な中枢ちゅうすう部としては、大坂表よりも、坂本のほうが地理的にも時間的にも便であり、使者の往来も、人目立たず、四道八通の利があった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大君の御膝下おひざもと、日本の中枢ちゅうすうと威張る東京人も、子供の様に尿屎ししばばのあと始末をしてもらうので、田舎の保姆ばあやの来ようが遅いと、斯様に困ってじれ給うのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この経は仏教経典の中では王座を占めている経で大乗仏教哲学思想の中枢ちゅうすうになるものだと言われている。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
マンのその言葉は、麻痺した神経にも、鋭く中枢ちゅうすうにひびいたものか、永田杢次は
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
軍事にかけては、ほとんど天才と言っていい大村は、新政府の中枢ちゅうすうともいうべき兵部大輔のこの要職を与えられると一緒に、ますますその経綸けいりんを発揮して、縦横無尽じゅうおうむじんの才をふるい出したのである。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
そのさいうして男性だんせい女性じょせい区別くべつしょうずるかともうすことは、にも重大じゅうだいなる神界しんかい秘事ひじでございますが、ようするにそれは男女なんによいずれかが身魂みたま中枢ちゅうすう受持うけもつかできまることだそうで、よくをつけて
この間、藤原氏の勢力一層はびこり、時に内訌ないこうはあったが、仲麻呂を中心とする一族はいよいよ強固に政治の中枢ちゅうすうをかためた。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
が、それはこの時期の傾向であり、ひとり、信長の業でもなく、ただ信長はより徹底し、一貫して、それへ積極的につとめ、もって、統一の中枢ちゅうすうとなしたものであるともいう。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵はその辺りを中枢ちゅうすうとして水陸に充満していた。船櫓せんろの鳴るところ旗ひらめき、剣槍のかがやくところ士馬のこえふるい、草木もこぞって、国を防ぐためにおののいているかと思われた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耳の穴からも、脳の中枢ちゅうすうへも、どうどうと、暴風のほえるに似た音響がこみ入ってくる。
視覚は無能になり触覚は魯鈍ろどんになり、脳の中枢ちゅうすうはやがて支配する神経に気をつかう必要がなくなって、ただ頭のなかに詰まっている不用物体となってどろんとしておるだけのようです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「また何かあったのか、どうも軍の中枢ちゅうすうで、そう毎日紛争があっちゃ困るな」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼のいるところ、政務の中枢ちゅうすうとなり、彼のおもむくところ、軍の本営となる。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それすら奇怪なのに、内容はなお、幕府中枢ちゅうすうの人々を驚愕させた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)