不倶戴天ふぐたいてん)” の例文
でもまあ無事ぶじでよかつた。人間にんげんめ! もうどれほど俺達おれたち仲間なかまころしやがつたか。これを不倶戴天ふぐたいてんてきとゆはねえで、なにふんだ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
西洋人が、耳をかすまいとしながらも、未練げにしがみついている必然性——僕の不倶戴天ふぐたいてんの敵だ——を東洋人は率直に言ってのける。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
君にとっては不倶戴天ふぐたいてんの敵、われわれも、もう一応、会っておかなければならないのだ、共に願ったりかなったりの好都合ではないか。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もっとも直接の討っ手といえば木曽義明ではございますが、命を下したは足利将軍、さればわたしの身にとっては、不倶戴天ふぐたいてんの父の仇。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かく云う吾輩を君の不倶戴天ふぐたいてんの親の仇、兼、女房の仇と認めさせる位の事は、説明の仕様で何の雑作もない事になるんだからね。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かつてマルクス主義者は、口を開けばすぐブルジョアがいけないと、まるでかたきのようにののしりました。不倶戴天ふぐたいてんのごとくに攻撃いたしました。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
しいて歪曲わいきょくしている点もなくはないが、不倶戴天ふぐたいてんの仇敵をやッつけた筆誅の余勢である。多少の誇張はしかたがあるまい。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いはく社会党は祖国に取つて不倶戴天ふぐたいてんの仇敵なり、一挙にして之れを全滅せざるべからずと、多謝す、アヽ独逸皇帝よ、汝の努力によつて我独逸の社会党は
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ガニマール氏はまたしても不倶戴天ふぐたいてんの敵アルセーヌ・ルパンのためにうまうまと一枚喰わされたのである。
圧制したものは圧制されたものの地位まで下がり、不倶戴天ふぐたいてんの敵同士のしかばねさえもまじりあってしまうのだ。
まるで不倶戴天ふぐたいてんあだででもある様にののしっている者もあれば、蝙蝠こうもりの様に、どちらへ行っても、都合のいいお座なりを云って、蔭でペロリと舌を出している者もあります。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
昨夜も昨夜とて小児の如くに人を愚弄して、あらわに負けてひそかかえり討に逢わした昇に、不倶戴天ふぐたいてん讎敵あだ、生ながらその肉をくらわなければこの熱腸が冷されぬと怨みに思ッている昇に
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
三十一年目で父近江を討った不倶戴天ふぐたいてんの敵の在処ありかを見付けたのは喜びにえない。
おれの不倶戴天ふぐたいてんの敵だ!
そうしたら大いに利用されてやろう。彼らと足利とは、不倶戴天ふぐたいてん、あくまで戦わねばならぬ宿敵だ。そのかんにいて、未来の活路をはかればよい。
「赤格子九郎右衛門はそちにとり、不倶戴天ふぐたいてんの父の仇だ。で五十人の部下を率い、東の門から乱入し、赤格子一人を目掛けるよう。さて次に郡上殿!」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「剣を取って向う時は、親もなく子もなく、弟子も師匠もない、入魂じっこんの友達とても、試合とあれば不倶戴天ふぐたいてんの敵と心得て立合う、それがこの竜之助の武道の覚悟でござる」
そうして今も云ったように、吾輩を君の不倶戴天ふぐたいてん仇敵かたきと思い込ませて、その事実を公式に言明させよう……彼の思い通りに引きゆがめた事件の真相を社会に曝露させてやろう。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この武蔵地方には、先年、彼にとっては、不倶戴天ふぐたいてんの仇敵ともいえる右馬允貞盛が、立ち廻っていた形跡がある。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにもう一つ三十郎は、不倶戴天ふぐたいてんの親のかたきであった。討って取らなければならなかった。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「老父をはじめ、我が一家の縁者を、みな殺しにした陶謙こそ、不倶戴天ふぐたいてん仇敵きゅうてきである」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不倶戴天ふぐたいてんの父のかたきゆえ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
われに越王勾践えつおうこうせん忍苦にんくあり、帷幕いばく民部みんぶ咲耶子さくやこ蔦之助つたのすけあり、忍剣にんけん龍太郎りゅうたろう驍勇ぎょうゆうあり、不倶戴天ふぐたいてんのあだ徳川家とくがわけを討ち、やがて武田再興たけださいこうの熱願、いな、天下掌握しょうあく壮図そうと、やわか
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不倶戴天ふぐたいてん
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)