下婢おんな)” の例文
ずお雪が乗った。娘は、父に抱かれながら門の外へ出て、母の手に渡された。下婢おんなは乳呑児の種夫を連れて、これも車でその後にしたがった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
下婢おんなの敷いて行った寝具よるのものは、彼の手で畳まれ、部屋の片隅に置かれてあった。女を待つに寝ていてはと、彼の潔癖性が、そうさせたものらしい。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
此の念を断切たちきる事は何うもかたい事です、修業中の行脚を致しましても、よく宿場女郎を買い、あるいは宿屋の下婢おんなに戯れ、酒のためについ堕落して
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「後は、下婢おんなにおさせ。おまえはお風呂に入って、お化粧をしていなければいけないでしょ。また不意に、清十郎様でも来て、そんな姿を見たら、愛想をつかされてしまう」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お雪が炬燵こたつのところに頭を押付けているのを見ると、下婢おんなも手持無沙汰の気味で、アカギレの膏薬こうやく火箸ひばしで延ばしてったりなぞしていた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
藤「実はこれ/\の悪党の為にだまされて此様こんな難に遭いましたが、従者とも下婢おんな岩と申すのは、何う致しましたか、何卒どうぞたずねなすって下さいまし」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ははは。お互いごとじゃ。——ごんぞ、下婢おんなにいうて、行水の湯を沸かさせておいてくれ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういう話をしているところへ、宿の下婢おんなが船の時間を知らせに来た。東京の方へ出る汽車が有ると見えて、宿をって行く旅人も有った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
成「なければ喜八郎を此処へ呼びなさい、下婢おんなを呼びにやりましょうから、貴公の手で手紙を書きなさい」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……これは、母上が、御自分の手で、夜業よなべいて下された黍粉だ。勝手元の下婢おんなにあずけて、粗末にせぬよう、団子だんごになとして、時折わしに喰わせてくれ。……幼い時からわしはそれが好きでなあ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この場所をえらんで、お仙はたらいを前に控えながら、何かすすぎ物を始めていた。下婢おんなのお春も井戸端に立って、水をんでいた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いずれの権妻か奥さんか如何にも品のある方で、日に三度着物を着替るが、浴衣によって上へ引掛ひっかける羽織が違うと云うので、色の黒い下婢おんな一人いちにん附いて居ります。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ごんぞは見えませぬか。では下婢おんなは」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山に居る頃はお房もよく歌ったうさぎの歌のことや、それからあの山の上の家で、居睡いねむりしてはよく叱られた下婢おんなかわずの話をしたことなぞを言出した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ふくろさえ得心なら、母諸共此方こっちへ引取って宜しい、もし窮屈でいやならば、いさゝ田地でんじでも買い、新家しんやを建って、お母に下婢おんなの一人も附けるくらいの手当をして遣ろうじゃアないか。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、下婢おんながいう。
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お雪は乳呑児ちのみごを抱いて二週間目で自分の家へ帰って来た。下婢おんなも荷物と一緒に車を降りた。つづいて、三吉が一番年長うえの兄の娘、お俊も、降りた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
富「其様そんな事は何うでもい、御新造松蔭のうちにいた下婢おんなは菊と云ったっけの」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おい、下婢おんな
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ウムお前の兄様あにさまは新五郎様と云ってね、親父様おとっさまはもうお酒好でねえ、お前が生れると間もなく、奥様は深い訳が有ってお逝去かくれになり、其の以前から、お熊と云う中働なかばたらき下婢おんなにお手が付いて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
衣装なり常着ふだんぎだからくはございませんが、なれども村方でも大尽だいじんの娘と思うこしらえ、一人付添って来たのは肩の張ったおしりの大きな下婢おんなふとっちょうで赤ら顔、手織ており単衣ひとえ紫中形むらさきちゅうがた腹合はらあわせの帯
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)