下地したぢ)” の例文
また、安永中あんえいちう続奥ぞくおく細道ほそみちには、——故将堂女体こしやうだうによたい甲胄かつちうたいしたる姿すがた、いとめづらし、ふるざうにて、彩色さいしきげて、下地したぢなる胡粉ごふんしろえたるは。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
上木屋町かみきやまちのお茶屋で、酒を飲んでゐたら、そこにゐた芸者が一人、むやみにはしやぎ廻つた。それが自分には、どうも躁狂さうきやう下地したぢらしい気がした。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「うん。かうして輿論よろんを喚起して置いてね。さうして、先生が大学に這入れる下地したぢつくる……」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さういふあひだ卯平うへいなたしのいくつかにいてはしらはしらとのあひだかべ下地したぢこまかな格子目かうしめんでた。しの東隣ひがしどなり主人しゆじんからうて苦竹まだけまじつたのをうしろはやしからつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
前日の書に申のこし候こと申上候。先大蔵謙介おほくらけんすけ(牛ごみの南御徒士町とやら承候)下地したぢ御とゞけ被下候たまものもあり。宜奉願上候。下地といへば江戸にては蕎麦の汁などを申候。備後にては由来を
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ところ或日あるひ石橋いしばしが来て、たゞかうしてるのもつまらんから、練習のために雑誌をこしらへては奈何どうかとふのです、いづれも下地したぢすきなりで同意どういをした、ついては会員組織くわいゝんそしきにして同志どうしの文章をつのらうと議決ぎけつして
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)