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をんなたち
次の
日の
夕。
道子はいつよりも
少し
早目に
稼ぎ
場の
吾妻橋へ
出て
行くと、
毎夜の
顔馴染に、
心やすくなつてゐる
仲間の
女達の
一人が
天秤棒で
兩方の
肩に
手桶をかついだ
近所の
女達がそこへ
水汲に
集まつて
來ます。
水の
不自由なところに
生れた
父さんは
特別にその
清水のあるところを
樂く
思ひました。
人形のやうな
此の
女達、
聲を
聞きたい、
錦葉に
歌ふ
色鳥であらう。
口紅だけは
少し
濃くしてゐるが、
白粉はつけてゐるのか
居ないのか
分らぬほどの
薄化粧なので、
公園の
映画を
見に
来る
堅気の
若い
女達よりも、
却つてジミなくらい。
女達は
毎夜のことなので、
互にその
名もその
年齢もその
住む
処も
知り
合つてゐる。