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ゆきかひ
今歳も
今日十二
月の十五
日、
世間おしつまりて
人の
往來大路にいそがはしく、お
出人の
町人お
歳暮持參するものお
勝手に
賑々しく、
急ぎたる
家には
餠つきのおとさへ
聞ゆるに
しまつたりと
飛び
退きて
畜生めとはまこと
踏みつけの
詞なり、
我が
物なれば
重からぬ
傘の
白ゆき
往來も
多くはあらぬ
片側町の
薄ぐらきに
悄然とせし
提燈の
影かぜに
瞬くも
心細げなる
一輛の
車あり
くり
返す
昔しのゆかりも
捨てがたく、
引つヾいて
行通しけるが、
見るにも
聞くにも
可愛想なり
氣のどくなり、これが
若しもお
侠ん
娘の
飛びかへりなどならば
知らぬ
事、
世といはヾ
門の
戸の
外をも
見ず