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はいしやく
列座の
方々、いづれも
豫て
御存じの
如く、
某勝手不如意にて、
既に
先年公義より
多分の
拜借いたしたれど、なか/\
其にて
取續かず、
此際家政を
改革して
勝手を
整へ
申さでは、
一家も
終に
危く
候。
お
軒下を
少々拝借致します……
就きまして
私は
新入の
乞食でございまして
唯今其処で
転びましてな、足を
摺破しまして血が出て困りますが
まアまア
何しろ
斯う
歇みなしに雪が
降つては
為方がない、
此家の
檐下を
拝借しようか……エー
最う日が
暮れたからな、
尚ほ
一倍北風が身に
染むやうだ、
坊は寒くはないか。
はい/\
有難うございます、誠にお
檐下を
拝借するばかりでも、
私は
有難いと
存じますのに、
又々お
強請申して、お
煙草の
粉末を願ひましたところ、
却つてお薬を
下されまして、はい
有難う
存じます