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ちやうきち
「だから、
云はない
事ツちやない。」と
蘿月は軽く
握り
拳で
膝頭をたゝいた。お
豊は
長吉とお
糸のことが
唯何となしに心配でならない。
長吉のわからずやは
誰れも
知る
亂暴の
上なしなれど、
信如の
尻おし
無くは
彼れほどに
思ひ
切りて
表町をば
暴し
得じ、
人前をば
物識らしく
温順につくりて
「ほんとさ。お
前さん。」お
豊は首を長く
延して、「私の
僻目かも知れないが、
実はどうも
長吉の
様子が心配でならないのさ。」
唐つきり
彼んな
袖のぺら/\した、
恐ろしい
長い
物を
捲り
上るのだからね、
左うなれば
來年から
横町も
表も
殘らずお
前の
手下だよと
煽すに、
廢して
呉れ二
錢貰ふと
長吉の
組に
成るだらう
長吉は
其の時
長命寺辺の
堤の上の
木立から、
他分旧暦七月の満月であらう、
赤味を帯びた大きな月の昇りかけて
居るのを認めた。
長吉の
野郎片腕がなくなる
物と
言ふに、
何故どうして
片腕がなくなるのだ。