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きふば
此ぢや
何うにも
仕樣がねえ。とても
出來ねえものなら
仕方はねえが、
最う
些と、これんばかしでも
都合をしねえ、
急場だから、
己の
生死の
境と
云ふのだ。
叔母の
云ふ
所によると、
宗助の
邸宅を
賣拂つた
時、
叔父の
手に
這入つた
金は、
慥には
覺えてゐないが、
何でも、
宗助のために、
急場の
間に
合せた
借財を
返した
上
心配の餘りまた
御部屋住の若旦那へ御咄し申すも
如何とは存じたなれども
急場の事にて
十方に暮參りまして
何うにか
御工風は御座りますまいかと
誠しやかに
述るにぞ世間知らずの千太郎聞くより大いに
仰天し心の内は
狂氣のごとく
溜息つきつゝ居たりしが如何なしたら
能らんと
言ふ
尾に付て長庵は