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かつてもと
私が
戻りましたからは
御心配なくお
就蓐下されと
洒然といひて
隣の
妻を
歸しやり、
一人淋しく
洋燈の
光りに
烟草を
吸ひて、
忌々しき
土産の
折は
鼠も
喰べよとこぐ
繩のまゝ
勝手元に
投出し
見る
目に
見なば
美男とも
言ふべきにや、
鼻筋とほり
眼もと
鈍からず、
豐頬の
柔和顏なる
敏、
流石に
學問のつけたる
品位は、
庭男に
成りても
身を
放れず、
吾助吾助と
勝手元に
姦ましき
評判は
其處で
各自が、かの
親不知、
子不知の
浪を、
巖穴へ
逃げる
状で、
衝と
入つては
颯と
出つゝ、
勝手許、
居室などの
火を
消して、
用心して、それに
第一たしなんだのは、
足袋と
穿もので、
驚破