みどり)” の例文
そして、コップのなかにはいった、みどりあおあか、いろいろのさけいろに、ぼんやりとれていますと、うとうとと居眠いねむりをしたのでした。
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
この絵本の色彩は歌麿が『吉原年中行事よしわらねんちゅうぎょうじ』と同じく各色かくしょくの間に配合せられしみどり二色にしょくは常によく全画面の色調を温和ならしめたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
やうやあさはなれてそら居据ゐすわつた。すべてのものあかるいひかりへた。しかしながら周圍しうゐ何處いづこにも活々いき/\したみどりえてうつらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おとなしい新らしい白、みどりの中だから、そして外光の中だから大へんいいんだ。天竺木綿てんじくもめん、その菓子かしつつみはいて行ってもいい。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
景色けしきだ、とこれから、前記ぜんき奥入瀬おいらせ奇勝きしようくこと一ばんして、くちあさぼらけ、みぎはまつはほんのりと、しまみどりに、なみあをい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その本流と付知つけち川との合流点を右折して、その支流一名みどり川を遡航そこうするふなべりに、早くも照り映ったのはじつにその深潭しんたん藍碧らんぺきであった。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
かく緑色みどりいろ植物しよくぶつの、とく固有こゆういろで、われ/\はといへば、すぐにみどりいろおもさずにゐられないくらゐしたしいいろです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ガチョウのせなかには、黄色いかわズボンをはき、みどりのチョッキを着て、白い毛織けおりの帽子ぼうしをかぶったチビさんがのっていました。
これを草木にたとうれば、みどりやなぎくれないの花と現れる世の変化も思想なる根より起こるものであるから、なにはさておき根の培養ばいようおこたれない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
赤と黄とみどりと青とむらさきとの五しきのしまのはいった着物きものをつけ、三かくの金色の帽子ぼうしをかぶり、緋色ひいろ毛靴けぐつをはいて、ぶらりとさがっていました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それにあんなものわけなく弾けるようになるんだから。僕だって「まつみどり」くらいなら弾けるよ」と先生は言っておられた。
ぎたる紅葉もみぢにはさびしけれど、かき山茶花さゞんかをりしりかほにほひて、まつみどりのこまやかに、ひすゝまぬひとなきなりける。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すわって居て行路の人をながむるのは、断片だんぺんの芝居を見る様に面白い。時々はみどり油箪ゆたんや振りのくれないを遠目に見せて嫁入りが通る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
天は浅黄色あさぎいろに晴れて綿雲わたぐもが夢のように浮かぶ。忍苦にんくの冬にたえてきた木々がいっせいにみどりをふきだす。土をわって草がかれんな花をつけた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
とりあかみどりはねをして、のどのまわりには、黄金きんまとい、二つのほしのようにきらきらひからせておりました。それはほんとうに美事みごとなものでした。
窓の外に、夜風にゆらいでいるアカシアの葉が、電燈の光に照らしだされ、幻燈のようなあざやかに濃いみどりを、浮きあがらせている。星が美しい。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
挨拶をして、部屋を出て、玄関正面へて、向を見ると、長い廊下のはづれ四角しかくに切れて、ぱつとあかるく、おもてみどりうつあがぐちに、池の女が立つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兎角とかくするほどあやしふねはます/\接近せつきんきたつて、しろあかみどり燈光とうくわう闇夜やみきらめく魔神まじん巨眼まなこのごとく、本船ほんせん左舷さげん後方こうほうやく四五百米突メートルところかゞやいてる。
はがれしかば天も漸々やう/\受納じゆなふ有てや是よりあめふり出して三日三晩小止こやみなく因て草木もみどりの色を生ぜしとかや趙氏が妻とお菊が孝心は和漢一つゐ美談びだんいつつべし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
富豪ものもちいへでは蟲干むしぼしで、おほきな邸宅やしきはどの部屋へやも一ぱい、それがにはまであふれだしてみどり木木きゞあひだには色樣々いろさま/″\高價かうかなきもの がにほひかがやいてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
盗人ぬすびとたちは、きたからかわ沿ってやってました。はなのきむらぐちのあたりは、すかんぽやうまごやしのえたみどり野原のはらで、子供こどもうしあそんでおりました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「林をいでかえってまた林中に入る。便すなわち是れ娑羅仏廟さらぶつびょうの東、獅子ししゆる時芳草ほうそうみどり、象王めぐところ落花くれないなりし」
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
よるいろにそのみどりくろずみ、可愛かあいらしい珊瑚珠さんごじゆのやうなあかねむたげではあるけれど、荒涼くわうりやうたるふゆけるゆゐ一のいろどりが、自然しぜんからこの部屋へやうつされて
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
まどガラスの中には、小さな人形にんぎょうが三つ、赤やみどりふくて、まるで、ほんとに生きているようだった。
それはホンの三じゃくほうくらいちいさいやしろなのですが、見渡みわたかぎりただみどり一色ひといろしかないなかに、そのお宮丈みやだけがくッきりとあかえているのでたいへんに目立めだつのでございます。
三人で手わけをしてみどり町から中の郷、松倉町と搜して龜澤町へ歸つて來ると、何んのこつた、お膝元の龜澤町に、青い印肉の型で、海老錠の合カギをこしらへたといふ
お日さまはあたたかに、りかがやいて、みどりがもえだし、つばめは巣をつくりはじめました。
春もやゝ景色とゝのふといひし梅も柳も雪にうづもれて、花もみどりもあるかなきかにくれゆく。
(明治四十年)春代次女みどりを生む。同年春代の夫死亡し、実家も死に絶えて身寄りなき為、彼女は母の縁をたよって、岩屋島に渡り、丈五郎の屋敷に寄寓することになった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なかにみどりのがあつたが、それはきつとひつけたのだらう。みんな野育のそだち無知むち子供こどもたちで、どこをしてくのだか、なにしろずんずんあるいてゆく。たゞ耶路撒冷イエルサレムしんじてゐる。
光吉こうきちの学校で拝賀式はいがしきがおこなわれている時刻じこくに、母は校舎こうしゃのすぐうらにあるみどりおか朝霜あさしもをふんで、そこにたたずんでいた。まどガラスごしに、式場しきじょうのありさまを見まもっているのだ。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
夕日なゝめに差し入る狭き厨房くりや、今正に晩餐ばんさんの準備最中なるらん、冶郎蕩児やらうたうじ魂魄たましひをさへつなぎ留めたるみどりしたゝらんばかりなるたけなす黒髪、グル/\と引ツつめたる無雑作むざふさ櫛巻くしまき紅絹裏もみうらの長き袂
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
どうだい、ついこの夏までは、右大臣織田信長うだいじんおだのぶなが居城きょじょうで、この山のみどりのなかには、すばらしい金殿玉楼きんでんぎょくろうが見えてよ、金のしゃちや七じゅうのお天主てんしゅが、日本中をおさえてるようにそびえていた安土城あづちじょうだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たゞ遠方ゑんぱうみどりなかで、それがわづかばかりうごいてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
我も来て和尚と云へる山のごと遼東の野のみどりに坐る
一 真白ましろ富士ふじ みどりしま
七里ヶ浜の哀歌 (新字新仮名) / 三角錫子(著)
みどりの森がよろこびのこえわら
笑いの歌 (新字新仮名) / ウィリアム・ブレイク(著)
あやにうごめき、みどり
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
みどり、ふとこそえて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
わかみどりしげ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
枝はみどりの酒のごと
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
みどりしづめる川上かはかみ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
なつになるとそれらが、あかみどり、さまざまのはないてうつくしかったのです。ちょうや、はちは、終日しゅうじつはなうえびまわっていました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
まん中がふくらみだして、とうとう青いのは、すっかりトパーズの正面しょうめんに来ましたので、みどりの中心と黄いろな明るいとができました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
たもとくろく、こんもりとみどりつゝんで、はるかにほしのやうな遠灯とほあかりを、ちら/\と葉裏はうらすかす、一本ひともとえのき姿すがたを、まへなゝめところ
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うして宏濶くわうくわつ水田すゐでんは、一にちどろひたつたまゝでも愉快相ゆくわいさううたこゑがそつちからもこつちからもひゞくとともに、段々だん/\あさみどりおほうて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さっそく、みんなは古いリスのかごを持ってきてやりました。このかごには、かわいいみどりの家と、針金はりがねでこしらえた車がはいっていました。
座敷には梅子が新聞しんぶんひざうへせて、み入つたにはみどりをぼんやり眺めてゐた。是もぽかんとむさうであつた。代助はいきなり梅子うめこの前へすはつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
見るものはただち黄色こうしょくを帯びたる淡く軟かき緑色りょくしょくとこれに対する濃きみどりあいとの調和に感じまた他の一作洲崎弁天海上眺望の図においては黄色と橙色とうしょくとの調和を
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かはらぬちぎりのれなれや千年せんねん松風しようふう颯々さつ/\として血汐ちしほのこらぬ草葉くさばみどりれわたるしもいろかなしくらしだすつき一片いつぺんなんうらみやとぶらふらん此處こゝ鴛鴦ゑんあうつかうへに。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)