“掩”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
おお78.8%
おほ15.6%
2.2%
おい0.5%
かぶ0.5%
0.2%
オホ0.2%
0.2%
0.2%
おおい0.2%
おおわ0.2%
おほう0.2%
おゝ0.2%
かく0.2%
オオ0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
晩春の黄昏たそがれだったと思う。半太夫は腕組みをし、棒のように立って空を見あげており、その脇でお雪が、たもとで顔をおおって泣いていた。
その主觀の情は、唯なかばおほはれてかすかに響きいづるのみ。(同所)是れ豈逍遙子が所謂、我を解脱して世間相を寫すものにあらずや。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
卯平うへい何時いつたれがさうしたのかむしろうへよこたへられてあつた。かれすくな白髮しらがはらつていた火傷やけどのあたりをうてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わがくべきはちりも払わず、更紗さらさの小包を二つ並べた間に、袋のままでさびしく壁に持たれている。いつ欝金うこんおいける事やら。あの曲はだいぶれた手に違ない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
食べ終ったものから順に茶碗ちゃわんはしを拭いて、布巾ふきんをその上にかぶせて、それから席を離れた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
狭いけれども宅には庭がありますから、右の矮鶏を、かごを買って来て、庭へ出して、半月ばかり飼って置きました。
づうとひ寄つて来た身狭乳母ムサノチオモは、郎女の前に居たけをソビヤかして、オホひになつた。外光の直射を防ぐ為と、一つは、男たちの前、殊には、庶民の目に、貴人アテビトの姿をサラすまい、とするのであらう。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
今はへ難くて声も立ちぬべきに、始めて人目あるをさとりてしなしたりと思ひたれど、所為無せんなくハンカチイフをきびしく目にてたり。静緒の驚駭おどろきは謂ふばかり無く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
東作は澁い茶一杯れるでもない冷たい態度で、少し茶かし加減にかう言ふのでした。
煤煙は昼も夜も絶え間なく部落の空をおおい包んだ。そして部落中は松埃まつぼこりで真黒に塗潰された。わけても柳、鼠梨、欅などの樹膚は、何れとも見分けがたくなって行った。
黒い地帯 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
しかる後尾瀬ヶ原に下る計画であったが、山頂まで白檜の森林におおわれた藪の深い様子を眺めては、到底縦走を続ける勇気もなく、近い大白沢山もススケ峰も一瞥を与えたのみで
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「しらばつくれて」おつぎはなゝめ脊負せおつた書藉しよせきうへから與吉よきちをぱたとたゝいた。與吉よきちしもしろおほうにはちひさな下駄げたでから/\とらしながらげるやうにけてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
代助は、百合ゆりはなながめながら、部屋をおゝふ強いなかに、のこりなく自己を放擲ほうてきした。彼はこの嗅覚の刺激のうちに、三千代みちよの過去を分明ふんみように認めた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
船の行手に、拳程の白い雲が湧いたと思ふと、見る間にそれが空一面に擴つて、金色の太陽をかくして了つた。——よく見ると、それは雲ぢやなかつた。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
兵法にも——帰ルイクサオオウコトナカレ、キワマルアダヲ追ウ勿レ——と戒めている。故に、われはかえって今、小路から蜀勢のうしろへ廻ろう。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)