番頭ばんとう)” の例文
も勤め此家の番頭ばんとうよばれたるちう八と云者何時いつの程にかお熊と人知ひとしらぬ中となりけるが母のお常は是を知ると雖も其身も密夫みつぷあるゆゑかれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
翌日よくじつあさ番頭ばんとうは、そとて、ゆっくり看板かんばんようとしてあおぐと、あっ! とこえをたて、おどろきました。かれは、あわててうちへはいると
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いや、私にはよく判る。氣の毒だが番頭ばんとうさん、子分の者に送らせるから、暫く八丁堀の笹野樣の役宅へでも行つて居て下さい」
番頭ばんとうはその帽子を手に取って、小首こくびを傾げて眺めました。自分の店にあるのだが、どうも見馴みなれないすてきな帽子なんです。
不思議な帽子 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ころがきのやうなかみつたしもげた女中ぢよちうが、雜炊ざふすゐでもするのでせう——土間どま大釜おほがましたいてました。番頭ばんとう帳場ちやうばあをかほをしてました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのまわりに、トキワ館の主人夫婦、番頭ばんとう、女中さんなどがむらがり、とまり客も、四—五人まじっていました。
天空の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おゝ、おかへりになりましたとも、そして今頃いまごろは、あの保姆ばあやや、番頭ばんとうのスミスさんなんかに、おまへ温順おとなしくおふねつてことはなしていらつしやるでせう。
小僧こぞう粗相そそう番頭ばんとう粗相そそう手前てまえから、どのようにもおわびはいたしましょうから、御勘弁ごかんべんねがえるものでございましたら、この幸兵衛こうべえ御免ごめんくださいまして。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おもて入口いりくちには焦茶地こげちやぢ白抜しろぬきで「せじや」と仮名かなあらは山形やまがたに口といふ字がしるしついところ主人あるじはたらきで、世辞せじあきなふのだから主人あるじ莞爾にこやかな顔、番頭ばんとうあいくるしく
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
要吉の仕事しごとの第一は、毎朝まいあさ、まっさきにきて、おもての重たい雨戸あまどをくりあけると、年上の番頭ばんとうさんを手伝てつだって、店さきへもちだしたえんだいの上に、いろんなくだものを、きれいに
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
番頭ばんとうがその箱を持って来たり、持って行ったりして、物静かに立ち働いている。すべてが地味で堅実らしい。その店へよく母に連れられて行った。それをしっかり覚えているのである。
奴婢ぬひ奴隷どれいで主人の家に寄食するもの、後世の商家の例で云えば、家人はかよ番頭ばんとう奴婢ぬひは住み込みお仕着せの奉公人という様な別があるのでありますが、これを通じては奴婢ぬひとも申した。
じつは、わたくしは、ある金持かねもちの商人しょうにん番頭ばんとうにすぎないのでございます。
そして、何故計算しなくてはならないかという理由も解らずに、しかも計算せずにはいられない人間の不必要な奇妙な性質たちの中に、愛はがっしりと坐っている。帳場ちょうば番頭ばんとうだ。そうではないか?
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
三十人の労働者あるいは店の手代てだい番頭ばんとうめかしい者が一群をなしていた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ここに紫金大街しきんたいがいで一番の大店舗おおみせしち、物産屋の招児かんばんも古い盧家ろけの内では、折しも盧の大旦那——綽名あだな玉麒麟ぎょくきりんが——番頭ばんとう丁稚でっちをさしずしてしきりにしち流れの倉出し物と倉帳くらちょうとの帳合ちょうあいをやっていたが
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ざうといふかよ番頭ばんとうふでにて此樣このやうむかぶみいやとはひがたし。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大将たいしょう、きれいなおんないてもらいたいとおもうんだが、すてきな、美人びじんいてくれないか。」と、菓子屋かしや番頭ばんとうがいいました。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
高信たかのぶさんが、そこへ、ひよつくりあらはれた、神職かんぬしらしいのに挨拶あいさつすると、附添つきそつて宿屋やどや番頭ばんとうらしいのが、づうと
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さてその翌朝、悪魔が眼を覚ますと、もう明るく日がさしていて、店の中には大勢おおぜい番頭ばんとうや子僧達が、掃除をしたり帽子を並べ直したりしていました。
不思議な帽子 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「親分、番頭ばんとうさんはそんな事をなさる方ぢや御座いません。これには何か間違ひがありませう、どうぞ——」
若いしうがどれとつてつて見ると、どうも先刻さつきみせて、番頭ばんとうさんとあらそひをして突出つきだされた田舎者ゐなかものてゐますといふから、どれとつて番頭ばんとうつて見ると
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
番頭ばんとう幸兵衛こうべえは、かべ荒塗あらぬりのように汚泥はねがっているまつろうすねを、しぶかおをしてじっと見守みまもった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
いろ/\のあつ待遇もてなしけたのちよるの八ごろになると、當家たうけ番頭ばんとう手代てだいをはじめ下婢かひ下僕げぼくいたるまで、一同いちどうあつまつて送別そうべつもようしをするさうで、わたくしまねかれてそのせきつらなつた。
ば吉兵衞と改め出精しゆつせいして奉公しける程に利發者りはつものなれば物の用に立事古參こさんの者にまさりければ程なく番頭ばんとう三人の中にて吉兵衞きちべゑには一番上席じやうせきとなり毎日々々細川家ほそかはけ御館おやかたへ參り御用を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
むすめにも同氣どうきもとむる番頭ばんとう勘藏かんざうにのみわつかせば横手よこて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「通い番頭ばんとうか」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、よくできた。人好ひとずきのするかおだな。」と、いつしか、そばにきてっていた番頭ばんとうが、感心かんしんしていったのであります。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひかりもあからさまにはさず、薄暗うすぐらい、冷々ひや/\とした店前みせさきに、帳場格子ちやうばがうしひかへて、年配ねんぱい番頭ばんとうたゞ一人ひとり帳合ちやうあひをしてゐる。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二十二でせがれの千きちみ、二十六でおせんをんだその翌年よくねん蔵前くらまえ質見世しちみせ伊勢新いせしん番頭ばんとうつとめていた亭主ていしゅ仲吉なかきちが、急病きゅうびょうくなった、こうから不幸ふこうへの逆落さかおとしに
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
へえ頂戴ちやうだいを……うも流石さすが御商売柄ごしやうばいがらだけあつて御主人ごしゆじん愛嬌あいけうがあつてにこやかなお容貌かほつき番頭ばんとうさんから若衆わかいしう小僧こぞうさんまでみな子柄こがらいなモシ、じつしいやうですな
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
にくからず思ひ毎夜まいよ此處へかよひお竹が手引にてあはせしが此隣このとなりに兩替屋の伊勢屋三郎兵衞と云者有り或夜子刻頃こゝのつどきごろに表の戸を叩きて旅僧たびそうなるが一夜の宿を貸給かしたまへと云ふを番頭ばんとうさまし旅人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
店の中には誰もいないで、奥の方に番頭ばんとうが一人居眠いねむりをしています。
不思議な帽子 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
番頭ばんとうさんの身持は?」
せい凱歌かちどきこゑいさましく引揚ひきあげしにそれとかはりて松澤まつざは周章狼狽しうしやうらうばいまこと寐耳ねみゝ出水でみづ騷動さうどうおどろくといふひまもなくたくみにたくみし計略けいりやくあらそふかひなく敗訴はいそとなり家藏いへくらのみか數代すだいつゞきし暖簾のれんまでもみなかれがしたればよりおちたる山猿同樣やまざるどうやうたのむ木蔭こかげ雨森新七あめもりしんしちといふ番頭ばんとう白鼠しろねづみ去年きよねん生國しやうこくかへりしのち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
百兩ひやくりやうをほどけばひとをしさらせる)古川柳こせんりうたいしてはづかしいが(特等とくとうといへば番頭ばんとうをしさり。)は如何いかん? 串戲じようだんぢやあない。が、事實じじつである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「あのたなのなかほどのふる仏像ぶつぞうですか、おまけして、五りょうでよろしゅうございます。」と、番頭ばんとうは、こたえました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
するとよめあね番頭ばんとうとでいぢめたので、よめつらくてられないから、実家さとかへると、親父おやぢ昔気質むかしかたぎ武士ぶしだから、なか/\かない、られてるやうな者は手打てうちにしてしまふ
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
夜が明けて、番頭ばんとうが蔵の戸を明けに来ました時、五右衛門ごえもんは泣き顔をしながらも、つかまっては大変ですから、いきなり中から飛び出して、番頭があっけに取られてるまに、一生懸命逃げ出してきました。
泥坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
番頭ばんとうさんの品だらう」
當時たうじまちはなれた虎杖いたどりさとに、兄妹きやうだいがくらして、若主人わかしゆじんはうは、町中まちなか或會社あるくわいしやつとめてると、よし番頭ばんとうはなしてくれました。一昨年いつさくねんことなのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「五りょう?」と、おとこはいって、みみうたがいました。千りょう……千三百りょう……が、五りょう? きっとこの番頭ばんとう盲目めくらなのだ。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其時分そのじぶんは人間が大様おほやうだから、かねあづける通帳かよひちやうをこしらへて、一々いち/\けては置いたが、その帳面ちやうめん多助たすけはうあづけたまゝくにかへつたのを、番頭ばんとうがちよろまかしてしまつたから、なに証拠しようこはない。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
宴會客えんくわいきやくから第一だいいち故障こしやうた、藝者げいしやこゑかないさきに線香せんかうれたのである。女中ぢよちうなかまが異議いぎをだして、番頭ばんとううでをこまぬき、かみさんが分別ふんべつした。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
呉服屋ごふくや番頭ばんとうは、うさんなつきで、かがや真珠しんじゅや、あかがにのゆびのようなあかいさんごをながめていましたが
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おとうさん、おとうさん。」と、小太郎こたろうは、きゅう心細こころぼそくなってごえして、ちちびました。けれど、なんの返答へんとうもありません。そのうち番頭ばんとうかおして
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
番頭ばんとうんでもらつてたづねますと、——勿論もちろんころをとこではなかつたが——これはよくつてました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「けっして、くるうようなことはありません。そんなおしなではございません。」と、番頭ばんとうこたえました。
時計のない村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はたせるかな銀貨ぎんくわうまんでるから、金慣かねなれた旦那だんなものどうぜぬ番頭ばんとう生意氣盛なまいきざかり小僧こぞうどもまで、ホツとつておどろかして、てんからつてたやうに、低頭平身ていとうへいしんして
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
店頭みせさきにすわった番頭ばんとうは、いぶかしげなかおつきをしてたずねました。子供こどもはかごのなかをのぞきながら
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)