まち)” の例文
あるまちはずれのさびしいてらに、和尚おしょうさまと一ぴきのおおきな赤犬あかいぬとがんでいました。そのほかには、だれもいなかったのであります。
犬と人と花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、海蔵かいぞうさんがいいました。そばにてみると、それはこの附近ふきん土地とちっている、まちとしとった地主じぬしであることがわかりました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
近所きんじょいえの二かいまどから、光子みつこさんのこえこえていた。そのませた、小娘こむすめらしいこえは、春先はるさきまち空気くうきたかひびけてこえていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つい、そのころもんて——あき夕暮ゆふぐれである……何心なにごころもなく町通まちどほりをながめてつと、箒目はゝきめつたまちに、ふと前後あとさき人足ひとあし途絶とだえた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのころぎゅうなべをつつくのは、ひんのわるいものがやることで、いれずみをしたまちのごろつきと、適塾てきじゅく書生しょせいとにかぎられていました。
其日そのひ二人ふたりしてまち買物かひものやうとふので、御米およね不斷着ふだんぎへて、あつところをわざ/\あたらしい白足袋しろたびまで穿いたものとれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
窃盜せつたう姦淫かんいん詐欺さぎうへてられてゐるのだ。であるから、病院びやうゐん依然いぜんとして、まち住民ぢゆうみん健康けんかうには有害いうがいで、不徳義ふとくぎなものである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
クリストフがいる小さなまちを、ある晩、流星りゅうせいのように通りすぎていったえらい音楽家おんがくかは、クリストフの精神せいしんにきっぱりした影響えいきょうを与えた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
まゐりましたところ堺町さかひちやうでうきたまちといふ、大層たいそうづかしい町名ちやうめいでございまして、里見さとみちうらうといふ此頃このごろ新築しんちくをした立派りつぱうち
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
夜中よなか彼等かれらつた。勘次かんじ自分じぶんいそぐし使つかひつかれたあしあるかせることも出來できないのでかすみうら汽船きせん土浦つちうらまちた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
長吉ちやうきちはふと近所の家の表札へうさつ中郷竹町なかのがうたけちやうと書いたまちの名を読んだ。そして直様すぐさまころに愛読した為永春水ためながしゆんすゐの「梅暦うめごよみ」を思出おもひだした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
まちの何軒目には、何という人が住んでいるということをそらんじて、何か非常な秘密を握った気になってよろこんでいたものである。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
京都きょうとに行ったことのある人は、きっとそこの清水きよみず観音様かんのんさまにおまいりをして、あのたか舞台ぶたいの上から目の下の京都きょうとまちをながめ
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
またなんじらのためにすべてのひとにくまれん。されどおわりまでしのぶものはすくわるべし。このまちにて、めらるるときは、かのまちのがれよ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そんなところに近い※クトル・マツセまちの下宿住居ずまゐが、東京にも見られない程静かな清清せいせいしたところだとは自分も来る迄は想像しなかつたのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
しかし汽車きしやはその時分じぶんには、もう安安やすやす隧道トンネルすべりぬけて、枯草かれくさやまやまとのあひだはさまれた、あるまづしいまちはづれの踏切ふみきりにとほりかかつてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「この人は四谷坂まちの伊豆屋という酒屋さんの番頭さんですが、少し親分にお願い申してえことがあるので、わっしが一緒に連れて来ました」
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかもロンドン以外いがいまちにもわが東京とうきよう帝室博物館ていしつはくぶつかんぐらゐのものが無數むすうにあるのは、なんとうらやましいことではありませんか。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
さあ其事そのこと御座ござんすとて、ねふめたる懷中ふところまちがくすりくすりと嘩泣むづかるを、おゝと、ゆすぶつて言葉ことばえぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私の考えは正しかったと見えて、平和な木曾の福島まちには、秋が行って冬が来て、その冬が終えて春になっても是という事件も起こらなかった。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ついでですが、みなさんはばかりでなく、そこいらのまちなかにある樹木じゆもく大切たいせつにしてえだつたりしないようにしてくださらなければいけません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
母馬おやうまうるささにがつかりして歸路きろにつきました。まちはづれまでくると、仔馬こうまきふあるきだしました。はやくいへへかへつておちゝをねだらうとおもつて。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そのうち 一休いっきゅうさんは 四じょう むろまちの 京都きょうといちばんの おおがねもち ぜにきゅうの いえに あらわれました。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
けれどもぼく故郷くに二萬石にまんごく大名だいみやう城下じやうかで、縣下けんかではほとんどふにらぬちひさまちこと海陸かいりくとも交通かうつう便べんもつとかいますから、純然じゆんぜんたる片田舍かたゐなか
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
九郎右衛門は渋りながら下関から舟に乗って、十二月十二日の朝播磨国室津むろのつに着いた。そしてその日のうちに姫路の城下ひらまちの稲田屋に這入はいった。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかも其燒失區域そのしようしつくいきまちもつと重要じゆうよう部分ぶぶんめてゐたので、損失そんしつ實際じつさい價値かちさら重大じゆうだいなものであつたのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
場所ばしょは、岡山市おかやまし郊外こうがいちかいMまちで、被害者ひがいしゃは、四ねんほどまえまで質屋しちやをやつていて、かたわら高利貸こうりかしでもあつたそうだが、目下もっか表向おもてむ無職むしょくであつて
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
女の名はまちといった。色白で体もすんなりと伸び、眼鼻だちも十人並を越えて美しかったが、起居振舞が鮮かに過ぎ、眉間みけんにきついかぬ気を見せていた。
松林蝙也 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そうか、それではまちがいあるまい。ああ、どんなにおちしただろう。すぐまち掃除そうじするよう布令ふれを出せ」
四又の百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
聞ながら行に行共々々ゆけども/\果しなくまことに始て江戸へ來る事なれば何と云處なるかまちの名も知れざれども其夜そのよ丑刻やつ時分じぶんに或町内の路次をひらき二人ながら内に入るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この大火のまち、深川にも、本所にも幕府ばくふの倉庫があり、商庫しようこもあつたことは、深川の河岸藏かしぐらには、米十萬七千俵、其他に、豆、麥、酒、油など莫大だつたと
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
が、この出來事できごとわたし眠氣ねむけ瞬間しゆんかんましてしまつた。やみなか見透みすかすと、人家じんか燈灯ともしびはもうえなくなつてゐた。Fまち夢中むちうとほぎてしまつたのだつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
乗物のりもの支度したくもなかつたので、私達わたくしたちはぞろ/\打揃うちそろうてそとた。そしてえんタクでもとおりかゝつたらばとおもつて、さびしいNまちとおりを、Tホテルのほうへとあるいた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
つきつてゐるところいてゐる、まちのとほりにゑてあるに、あたるところのかぜおとたかさに、なるほどひどいかぜだとおもつてそらると、げられたちり
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
黄金こがねの金具を打ったかごまち四辻よつつじを南の方へ曲って往った。轎の背後うしろにはおともの少女が歩いていた。それはうららかな春の夕方で、夕陽ゆうひの中に暖かな微風が吹いていた。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
隙間すきまもなうくろとばり引渡ひきわたせ、こひたすくるよるやみそのやみまちものふさがれて、ロミオが、られもせず、うはさもされず、わしこのかひななか飛込とびこんでござらうやうに。
「では申上げますが、実は親分さん、私は銀町しろがねちょう石井三右衛門いしいさんえもんの奉公人、まちと申す者でございますが」
玄竹げんちく藥箱くすりばこなりおもいものであつた。これは玉造たまつくり稻荷いなり祭禮さいれい御輿みこしかついだまちわかしうがひどい怪我けがをしたとき玄竹げんちく療治れうぢをしてやつたおれいもらつたものであつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「明日かへりこん」(桜人その船とどめ島つ田を十まち作れる見て帰りこんや、そよや明日帰りこんや)と口ずさんで縁側へ出て行くのを、女王にょおうは中から渡殿の口へ先まわりをさせて
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ロンドン・キャムデンまちなる二つの急な街の侘しい黄昏の中に、角にある菓子屋の店は葉巻の端のように明るかった。あるいはまた花火の尻のように、と言う方がふさわしいかもしれない。
まち小學校せうがつかう校長かうちやうをしてゐた彼女かのぢよをつとは、一年間ねんかんはいんで、そして二人ふたり子供こどもわかつま手許てもとのこしたまゝんでいつた。のこつたものは彼女かのぢよおも責任せきと、ごくわづかなたくはへとだけであつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
マンは、三次と別れ、蛭子通えびすどおりから、原田雲井の家のあるはままちへ曲った。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
吾が同郡どうぐんをかまち旧家きうか村山藤左ヱ門はむこの兄なり。此家に先代より秘蔵ひさうする亀の化石くわせきあり、つたへていふ、ちか山間さんかんの土中より掘得ほりえしといふ、じつに化石の奇品きひんなり、こゝあげ弄石家ろうせきかかんまつ
卒業式に晴衣はれぎを着飾ってくる女生徒の群れの中にもかれの好きな少女が三四人あった。紫の矢絣やがすり衣服きもの海老茶えびちゃはかまをはいてくる子が中でも一番眼に残っている。その子はまちはずれの町から来た。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「Nまちへはこれを右へ折れて、とつ附きの四辻を左に折れるといゝ。」
けてひよつこりまち
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
まち若衆わかしゆ
霜夜 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
まち
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
まちつばめ
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隨分ずゐぶん故郷こきようそらなつかしくなつたこと度々たび/\あつた——むかし友人ともだちことや——品川灣しながはわん朝景色あさげしきや——上野淺草うへのあさくさへん繁華にぎやかまちことや——新橋しんばし停車塲ステーシヨンことや——回向院ゑこうゐん相撲すまふことや——神樂坂かぐらざか縁日えんにちことや——よろづ朝報てうほう佛蘭西フランス小説せうせつことや——錦輝舘きんきくわん政談せいだん演説えんぜつことや——芝居しばゐこと浪花節なにはぶしこと