時刻じこく)” の例文
さて、三ねんまへ、……ちがひます。なれども、おな霜月しもつきさり、ちやうおないま時刻じこくわれらにもお前樣まへさまおなことがありました。……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この時刻じこくに、学校がっこう先生せんせいが、このはらっぱをとおることがあります。みんなはあそびながらも、なんとなく、にかかるのでありました。
こま (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これはもうし上げられませぬ。てまえのかってな用事ようじをたしにでかけたのです。どうもほかの時刻じこくでは、つごうがわるいものですから。」
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
此間このあひだうまれたすゑをとこが、ちゝ時刻じこくたものか、ましてしたため、ぞく書齋しよさいけてにはげたらしい。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『まあよかった……。』そのときわたくしはそうおもいました。いよいよとなると、矢張やはりまだおくれがして、すこしでも時刻じこくばしたいのでした。
いよいよお嫁合よめあわせの時刻じこくになると、その支度したく出来できたお座敷ざしきへ、いちばん上のにいさんから次男じなんなん順々じゅんじゅんにおよめさんをれてすわりました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それで彼等かれらよる時刻じこくると、目明めあき手曳てびきがだんだんと家々いへ/\くばつてあるく。さうしては手曳てびきがそれをあつめてれてかへつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
見て餘所よそながらなる辭別いとまごひ愁然しうぜんとして居たる折早くも二かうかね耳元みゝもとちかく聞ゆるにぞ時刻じこく來りと立上りおとせぬ樣に上草履うはざうりを足に穿うがつて我家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女学生は蛇や蜥蜴とかげの中にいつまでもじっとたたずんでいる。あすこは存外ぞんがい暮れ易いだろう。そのうちに光は薄れて来る。閉館の時刻じこくもせまって来る。
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すると金魚屋きんぎょやは、そのころ時刻じこくだつたら、パチンコにいたとこたえたから、井口警部いぐちけいぶはその実否じっぴを、平松刑事ひらまつけいじめいじてたしかめさせることにした。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
若君わかぎみ時刻じこくをうつしては一大事です。ともあれ竹童を先にやって、てんおかのようすを、しかと見とどけさせましょう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分じぶん觀測所かんそくじよとの間隔かんかく一二里以内いちにりいないであるならば、兩方りようほう時刻じこくならび時間じかんとも大體だいたいおなあたひるべきはずである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
いまその二本にほん烟筒えんとうからさかんに黒煙こくえんいてるのはすで出港しゆつかう時刻じこくたつしたのであらう、る/\船首せんしゆいかり卷揚まきあげられて、徐々じよ/\として進航しんかうはじめた。
わたしたちはもう出て行く時刻じこくになった。出かけるまえにわたしは長く持つようにいい火をこしらえて、ジョリクールを毛布もうふの中にすっかりくるんだ。
みな其処そこに寄り集まつておとほりの時刻じこくつてりますので、うちもくずしが出たり種々しゆ/″\御馳走ごちそうますうちにチヨン/\と拍子木ひやうしぎを打つてまゐりました。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
殺したのは兄、時刻じこくも同じだ。あつしは道學の先生ぢやないが、人を呪はゞ穴二つとはよく言つたものですね
かいしての、R大使館たいしかんからの招待日せうたいびだつたので、そのかれはかまなどつけて、時刻じこくがまだはやかつたところから、I下宿げしゆくつて一とはなししてからかけた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
同じ時刻じこくに同じ場所を動いているのだが、よく見ると顔ぶれの幾人いくにんかがかわり、そのせいでか、みんなの表情もあたりの木々の新芽しんめのように新鮮しんせんなのに気がつく。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
合點がてんつたらかくかへれ、主人あるじ留守るすことはりなしの外出ぐわいしゆつ、これをとがめられるとも申譯まをしわけことばるまじ、すこ時刻じこくおくれたれどくるまならばひ一トとびはなしはかさねてきにかう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だが、よく日から学校の休みになった光吉こうきちは、母が病院びょういんからまわってくる時刻じこくをはかって、丸市まるいちマーケットへ出かけていった。どうしても母にかわってはたもちがやりたかったのだ。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
時刻じこく時刻じこくゆゑ、おれこゝろ殘忍ざんにん兇暴きょうばうゑたるとら鳴渡なりわた荒海あらうみよりもたけしいぞよ。
なつさかりながれかけ、いつもならば洗湯せんたうき、それから夕飯ゆふめしをすますとともに、そろ/\かせぎに出掛でかける時刻じこくになるのであるが、道子みちこがけにいたまゝの夜具やぐうへよこたはると
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
おみちは朝から畑にあるもので食べられるものをあつめていろいろにり合せてみた。嘉吉かきちは朝いつもの時刻じこくをさましてからそべったまま煙草たばこを二、三ぷくふかしてまたすうすうねむってしまった。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
時刻じこくは午前五時十五分。場所は東京新星空港だ。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのばん太郎たろう母親ははおやかって、二日ふつかおな時刻じこくに、きんをまわしてはしっている少年しょうねんのことをかたりました。母親ははおやしんじませんでした。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
法一ほういちは、いいつけられたとおりに、えんがわにすわっていました。と、いつもの時刻じこくがきて、いつもの武士が、裏門うらもんからはいって来ました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
龍王りゅうおうはいって、藤太とうだをくつろがせ、いろいろとごちそうをしているうちに時刻じこくがたって、だんだんくらくなってました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
時刻じこく時刻じこくなので、夕飯ゆふめしひにきやくかはかはた。そのおほくは用辯的ようべんてき飮食いんしよくまして、さつさと勘定かんぢやうをしてだけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
連て立ち出しは既に時刻じこくを計りし事故黄昏たそがれ近き折なれば僅かの内に日は暮切くれきり宵闇よひやみなれば辻番にて三次は用意の提灯ちやうちんあかりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
えだ所々しよ/\にごつた月影つきかげのやうな可厭いやいろもやからんで、ほしもない……やまふか谷川たにがはながれのぞんだおもひの、暗夜やみ四谷よツやたにそこ時刻じこくちやうど一ごろ
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
罪人ざいにんどもの泣きほえるのを、いちいち取りあげていてはてしがない。それッ、時刻じこくぎぬうちに支度したくをせい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あつくさいきれであせびつしりにつて彼等かれら身體からだ時刻じこくぎたとえだあひだからつよひかり投掛なげかけてうながまで
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
殺したのは兄、時刻じこくも同じだ。あっしは道学の先生じゃないが、人を呪わば穴二つとはよく言ったものですね
このほかほ、もしきゝもしたきこと澤山たくさんあつたが、時刻じこくすでに八ちかく、ていへんにはすで夥多あまた水兵すいへいあつまつてて、最早もはや工作こうさくはじまる模樣もやうつは、海岸かいがんいへには
もつともわたしがからつたときには、うまからちたのでございませう、粟田口あはだぐち石橋いしばしうへに、うんうんうなつてりました。時刻じこくでございますか? 時刻じこく昨夜さくや初更しよかうごろでございます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「いいや、入れてくれはしないよ。このへんに住んでいるのは植木屋だ。朝早く市場へみんな出かけるのだ。この時刻じこくにどうして起きてうちへ入れてくれるものか。さあ行こう」
光吉こうきちの学校で拝賀式はいがしきがおこなわれている時刻じこくに、母は校舎こうしゃのすぐうらにあるみどりおか朝霜あさしもをふんで、そこにたたずんでいた。まどガラスごしに、式場しきじょうのありさまを見まもっているのだ。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
いろ蒼白まッさを!……ほかにもたれやら? や、パリスどのまで? あまつさへ血汐ちしほひたって?……あゝ/\、なんといふ無慚むざん時刻じこくぢゃ、如是こんなあさましいことをば一とき爲出來しでかすとは!……や、ひめ身動みうごきやる。
良吉りょうきちした新聞しんぶんは、翌々日よくよくじつあさへだたったまち郵便局ゆうびんきょくから、配達はいたつされました。いつも、それは、ひるすこしまえの、時刻じこくにきまっています。
母の心 (新字新仮名) / 小川未明(著)
食事しよくじましても、出勤しゆつきん時刻じこくにはまだ大分だいぶがあつた。坂井さかゐではさだめてさわいでるだらうとふので、文庫ぶんこ宗助そうすけ自分じぶんつてつてことにした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……ひとらぬが、此処こゝ老人らうじんに、みづなか姿すがたあらはすまぼろしをんな廻向えかうを、とたのまれて、出家しゆつけやくぢや、……よひから念仏ねんぶつとなへてつ、と時刻じこくた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
待内に愈々いよ/\雨は小止こやみなくはや耳先へひゞくのは市ヶ谷八まん丑時やつかね時刻じこくはよしと長庵はむつくと起て弟の十兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「なんと申す! 滝川攻たきがわぜめのため、近ごろ桑名にいると聞く秀吉の陣へそれを送りこむという手はずになっているのか。してそれは何日、時刻じこく何時なんどきじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるとき天子てんしさまの御所ごしょ毎晩まいばん不思議ふしぎ魔物まものあらわれて、そのあらわれる時刻じこくになると、天子てんしさまはきゅうにおねつが出て、おこりというはげしいやまいをおみになりました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「まだ、日が暮れたばかりで、そんなに暗くなつたわけぢやありませんが、兎も角若い娘の獨り歩きする時刻じこくぢやないから、叱るやうにして家へ送り屆けて來ましたよ」
あすの晩も、おなじ時刻じこく使つかいのものをあげますから、どうぞおいでくださいまし。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ばん料理れうり使つか醤油しやうゆるので兩方りやうはうねて亭主ていしゆ晝餐休ひるやすみの時刻じこく天秤てんびんかついで鬼怒川きぬがはわたつた。村落むらみせでははずに直接ちよくせつ酒藏さかぐらつたのでさけ白鳥徳利はくてうどくりかたまでとゞいてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
最早もはや袂別わかれ時刻じこくせまつてたので、いろ/\の談話はなしはそれからそれとくるかつたが、兎角とかくするほどに、ガラン、ガラ、ガラン、ガラ、と船中せんちゆうまは銅鑼どらひゞきかまびすしくきこえた。
ちょうど、それとおな時刻じこくに、てらかねつきどうにつるしてあるかねふとつなれて、かねは、ひびきをたててしたちたのでした。
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其処そこではじめのうちわれともなくかねきこえるのを心頼こゝろたのみにして、いまるか、もうるか、はて時刻じこくはたつぷりつたものをと、あやしんだが、やがていて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)