“割(わ)” の例文
油煙(ゆえん)がぼうつと騰(あが)るカンテラの光(ひかり)がさういふ凡(すべ)てを凉(すゞ)しく見(み)せて居(ゐ)る。殊(こと)に斷(た)ち割(わ)つた西瓜(すゐくわ)の赤(あか)い切(きれ)は小(ちひ)さな店(みせ)の第(だい)一の飾(かざ)りである。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
卜斎(ぼくさい)の鉄拳(てっけん)をくったせつなに、仮面(めん)は二つに割(わ)られてしまった。そして二つに割られた仮面が、畳(たたみ)の上に片目をあけて嘲笑(あざわら)っている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みんなは、たまげた顔(かお)つきをして、足(あし)もとを見(み)つめていますと、その割(わ)れ目(め)は、ますます深(ふか)く、暗(くら)く、見(み)るまに口(くち)が大(おお)きくなりました。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
私(わたくし)は別(べつ)に婦道(ふどう)が何(ど)うの、義理(ぎり)が斯(こ)うのと言(い)って、六ヶ(むずか)しい理窟(りくつ)から割(わ)り出(だ)して、三浦(みうら)に踏(ふ)みとどまった訳(わけ)でも何(なん)でもございませぬ。
「もうこんなぐあいです。どうかたくさん笑(わら)ってやってください」と言(い)うとたん、貝(かい)の火は鋭(するど)くカチッと鳴って二つに割(わ)れました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
カピはそのときまですみっこに静(しず)かに考えこんで転(ころ)がっていたが、はね上がって後足で立ちながら、わたしたちの間に割(わ)りこんで来た。
少(すこ)し時間(じかん)が遲(おく)れたので、寄席(よせ)は一杯(いつぱい)であつた。二人(ふたり)は坐蒲團(ざぶとん)を敷(し)く餘地(よち)もない一番(いちばん)後(うしろ)の方(はう)に、立膝(たてひざ)をする樣(やう)に割(わ)り込(こ)まして貰(もら)つた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こうおじいさんは言(い)いながら、桃(もも)を両手(りょうて)にのせて、ためつ、すがめつ、ながめていますと、だしぬけに、桃(もも)はぽんと中から二つに割(わ)れて
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とうとうそれは固(かた)く固(かた)く凍(こお)ってきて、子家鴨(こあひる)が動(うご)くと水(みず)の中(なか)の氷(こおり)がめりめり割(わ)れる様(よう)になったので、子家鴨(こあひる)は、すっかりその場所(ばしょ)が氷(こおり)で
さて新石器時代(しんせつきじだい)の人類(じんるい)はどういふふうな生活(せいかつ)をしてゐたかといひますと、やはり舊石器時代(きゆうせつきじだい)の人間(にんげん)と同(おな)じように、石(いし)を割(わ)つたり
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
此方(こつち)から算盤(そろばん)を彈(はじ)いて、この土地(とち)の人間(にんげん)の根性(こんじやう)を數(かぞ)へてやると泥棒(どろぼう)に乞食(こじき)を加(くは)へて、それを二(ふた)つに割(わ)つたやうなものだなう。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
頭はたたき割(わ)られ、腕(うで)はへし折られて、これがあの温厚(おんこう)な人の姿であるか、と憤(いきどお)りを感じさせるほどに、ひどいものだった。
「私(わたし)の坊(ばう)やはね、蹄(ひづめ)が二つに割(わ)れてゐて、毛色(けいろ)はぶちで尻(し)つぽもちやんとついてゐて、私(わたし)を呼(よ)ぶときは、もう/\つて可愛(かあい)い聲(こゑ)で呼(よ)びますよ。」
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
「だけど、あの子はすぐに氷の割(わ)れ目にでも落(お)っこちるぐらいのとこだろうな。」と、ガンは心ぼそくなってきました。
割(わ)つて通(とほ)つた人間(にんげん)の袖(そで)の煽(あふ)りに、よた/\と皆(みな)左右(さいう)に散(ち)つた、中(なか)には廻廊(くわいらう)に倒(たふ)れかゝつて、もぞ/\と動(うご)くのもある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
近くあからさまな男女の話し声や子どもの泣(な)き騒(さわ)ぐ声、のこぎりの音まき割(わ)る音など、すべてがいかにもまた、まのろくおぼろかな色をおんで聞こえる。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
夜は太(いた)く更(ふ)けにければ、さらでだに音を絶(た)てる寂静(しづかさ)はここに澄徹(すみわた)りて、深くも物を思入る苦しさに直道が蹂躙(ふみにじ)る靴の下に、瓦の脆(もろ)く割(わ)るるが鋭く響きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と細(ほそ)く竹(たけ)の割(わ)つたのまで呉(く)れてよこしました。その細(ほそ)い竹(たけ)を削(けづ)りまして、竹(たけ)の子(こ)の手桶(てをけ)に差(さ)しますと、それで提(さ)げられるやうに成(な)るのです。水(みづ)も汲(く)めます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
割(わ)つても言はせて見せんと大音(だいおん)に罵(のゝ)しり又もや拷問(がうもん)に懸(かけ)んとす然るに傳吉は最早(もはや)覺悟の事なれば疲(つか)れたる聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
サンプソンとエブラハムと劍(けん)を拔(ぬ)いて戰(たゝか)ふ。ベンヺーリオー此(この)體(てい)を見(み)て駈(か)け來(きた)り、劍(けん)を拔(ぬ)き、割(わ)って入(はひ)る。
なお間違いのないように、割(わ)り符(ふだ)を渡しておこう……と云って自分の名刺を半分に割(さ)いて、一つを支配人に渡し、残りの一つを自分のポケットに入れたそうです
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこで大國主の命が出雲(いずも)の御大(みほ)の御埼(みさき)においでになつた時に、波(なみ)の上(うえ)を蔓芋(つるいも)のさやを割(わ)つて船にして蛾(が)の皮をそつくり剥(は)いで著物(きもの)にして寄(よ)つて來る神樣があります。
お高(たか)涙(なみだ)の顏(かほ)恨(うら)めしげに、お情(なさけ)なしまだ其樣(そん)なこと自由(まゝ)にならば此胸(このむね)の中(なか)斷(た)ち割(わ)つて御覽(ごらん)に入(い)れたし。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
本船(ほんせん)は連續(つゞけさま)に爆裂信號(ばくれつしんがう)を揚(あ)げ、非常滊笛(ひじやうきてき)を鳴(な)らし、危難(きなん)を告(つ)ぐる號鐘(がうしやう)は割(わ)るゝばかりに響(ひゞ)き渡(わた)つたけれど、海蛇丸(かいだまる)は音(おと)もなく、ずん/\と接近(せつきん)して來(く)るばかりである。
匙(さじ)としては貝殼に柄(え)を付(つ)けたるもの用ゐられ、肉差しとしては獸骨を割(わ)りて磨(す)り尖(とが)らしたるもの用ゐられしならん。肉差しの如き骨器は常陸椎塚の貝塚より數個出でたり
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
一刻も早く両刀を一手におさめて柄を脱(の)けたならば、必ずや、大の乾雲からは、割(わ)り文(ぶみ)の後片火説の紙が生まれ、小の坤竜は、前半水法のくだりを吐き出すに相違ない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「イングラム孃の御口づからの御命令ならば、水を割(わ)つた乳の杯(さかづき)にも酒の精(スピリット)が入りませう。」
まず※は幾条(いくすじ)にも割(わ)れ裂(さ)ける、それでもって打たれるので※(かわ)の裂目のひりひりしたところが烈(はげ)しく触(さわ)るから、ごくごく浅い疵(きず)ではあるが松葉(まつば)でも散らしたように微疵(かすりきず)が顔へつく。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まあ割(わ)れ鍋(なべ)にはとじぶたという釣りあいでさがしてくれる例を知っていますけれど、何しろ二人の妹は満州と広東(カントン)に嫁にいっていて消息なく、二人の弟はどちらも戦死してしまい
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
短かい髪を二ツに割(わ)けて、三ツ編(あみ)のお下げにし、華やかな洋装となった錦子の学校通いは、神田、本郷の書生さんたちの血を沸騰させた。美妙斎の食指のムズムズしないわけはない。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
が、僕はつい近頃やはり当時から在職してゐたT先生にお目にかかり、女生徒に裁縫(さいほう)を教へてゐた或女の先生も割(わ)り下水(げすゐ)に近い京極(きやうごく)子爵家(?)の溝(どぶ)の中に死んだことを知つたりした。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
押されて南北たがいに戦争している、こんな割(わ)りにあわない話はないんだよ
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
彼等の来様(きよう)が些(ちと)晩(おそ)かったので、三番叟(さんばそう)は早や済んで居た。伊賀越(いがごえ)の序幕は、何が何やら分からぬ間に過ぎた。彼等夫妻も拝殿から下りて、土間に割(わ)り込み、今幕があいた沼津の場面を眺める。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
さぁたいへん、鬼どもはあわてふためきながら逃(に)げ出した。家来(けらい)の一匹(ぴき)は土間(どま)へもんどり打って転げ落ち腰(こし)を折(お)ってしまった。他の二匹の家来は柱に頭をぶつけて頭(あたま)の鉢(はち)をぶち割(わ)ってしまった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
乳(ちゝ)を混(こん)ぜざる濃茶(のうちや)を喜(よろこ)び、水(みづ)を割(わ)らざる精酒(せいしゆ)を飮(の)み、沈鬱(ちんうつ)にして敢爲(かんい)、堅(かた)く國立(こくりつ)の宗教(しゆうきよう)を持(ぢ)し、深(ふか)く祖先(そせん)の業(げふ)を重(おも)んず、工業(こうげう)甚(はなは)だ盛(さかん)ならざるが故(ゆゑ)に中等社界(ちうとうしやくわい)の存(そん)するところ多(おほ)くは粗朴(そぼく)なる農民(のうみん)にして
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
「糸太でも着てこそよかろう。甕(かめ)打(う)ち割(わ)ればからだは裸(はだか)」
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
何者か我に命じぬ割(わ)り切れぬ數を無限に割りつゞけよと
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
鞘(さや)が割(わ)れて、刃(は)が肉(にく)を切(き)つたといふのであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「斯う皿に割(わ)って肉を受けて食べる」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と桃割(わ)れの女は云つた。
御門主 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かならずひとつ鉢(はち)を割(わ)り
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いくつも桃割(わ)つて
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
踊(をど)つて唄(うた)うて渇(かつ)した喉(のど)に其處(そこ)に瓜(うり)が作(つく)つてあるのを知(し)れば竊(ひそか)に瓜(うり)や西瓜(すゐくわ)を盗(ぬす)んで路傍(みちばた)の草(くさ)の中(なか)に打(う)ち割(わ)つた皮(かは)を投(な)げ棄(す)てゝ行(ゆ)くのである。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
單(たん)に頭(あたま)から割(わ)り出(だ)した、恰(あたか)も畫(ゑ)にかいた餠(もち)の樣(やう)な代物(しろもの)を持(も)つて、義理(ぎり)にも室中(しつちゆう)に入(い)らなければならない自分(じぶん)の空虚(くうきよ)な事(こと)を耻(は)ぢたのである。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
木田(きだ)は、小(ちい)さくなったズボンをはいていたもので、うずくまるとおしりが割(わ)れて、さるのおしりのように見(み)えたのも目(め)にうつってきました。
すいれんは咲いたが (新字新仮名) / 小川未明(著)
といいながらうりを割(わ)りますと、中には案(あん)の定(じょう)小蛇(こへび)が一匹(ぴき)入(はい)っていました。見(み)ると忠明(ただあきら)のうった針(はり)が、ちゃんと両方(りょうほう)の目にささっていました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ひそかに北平(ほくへい)(河北省・満城附近)の太守公孫瓚(こうそんさん)へ使いを派し、冀州を攻(う)って、これを割(わ)け奪りにしようではないか。——そういってやるのです」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おや! 一番(いちばん)大(おお)きいのがまだ割(わ)れないでるよ。まあ一体(いったい)いつまで待(ま)たせるんだろうねえ、飽(あ)き飽(あ)きしちまった。」
この類(るい)の石棺(せきかん)の蓋(ふた)は、家(いへ)の屋根(やね)に似(に)た形(かたち)に出來(でき)てゐるのもあり、また竹(たけ)を二(ふた)つに割(わ)つた形(かたち)をしてゐるのもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
書斎(しょさい)にかけこむと、庭に面(めん)した三つの窓のうち二つが、めちゃくちゃにガラスをたたき割(わ)られていて、床(ゆか)いちめんに、ガラスの破片(はへん)がちらばっていた。