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黯然
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あんぜん
ふりがな文庫
“
黯然
(
あんぜん
)” の例文
そして、この夜こそ、恐らく、彼れが大きな天空を眺めて楽しむ最後の時となるだろうという事を、独り
黯然
(
あんぜん
)
と予覚するのであった。
ラ氏の笛
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
ぼくは、あなたが、てっきりぼく達のことについて、なにか言われたのではないかと、勝手な想像をして、
黯然
(
あんぜん
)
となったのです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
それを読んで、私は
黯然
(
あんぜん
)
とした。諸戸は彼の父親ののっぴきならぬ罪状を聞かされて、どんなにか驚き悲しんだことであろう。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
其
(
その
)
奥には社殿の
燈明
(
とうみやう
)
——
私
(
わたし
)
は
其
(
その
)
一生を
征旅
(
せいりよ
)
の
中
(
うち
)
に送つて、この辺土に墓となつた
征西将軍宮
(
せい/\しやうぐんのみや
)
の
事蹟
(
じせき
)
を考へて
黯然
(
あんぜん
)
とした。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
彼は
黯然
(
あんぜん
)
とした顔になったが、やはり黙っていた。その黙っているところがかえって自分の胸の
中
(
うち
)
に強い衝動を与えた。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
彼女も連れて玉川に遊びに往ったら、玉川電車で帰る東京の娘を見送って「別れるのはつらい」と
黯然
(
あんぜん
)
として云った。彼女は妙に不幸な子であった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
友達が連れて帰ってくれたのだったが、その友達の話によると随分
非道
(
ひど
)
かったということで、自分はその時の母の気持を思って見るたびいつも
黯然
(
あんぜん
)
となった。
泥濘
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「わすの子供も屹度停学処分を受けることと思ふが、それでも君のやうに心を入れかへる機縁になるなら、わすも嬉しいがのう」と
黯然
(
あんぜん
)
とした涙声で
愬
(
うつた
)
へた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
磯五のことばに、おせい様が
黯然
(
あんぜん
)
とうつむくと、磯五は、そのほっそりした
項
(
うなじ
)
へそっと
唇
(
くちびる
)
を持って行った。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
といってきっぱり思いきったように、火のように熱く目にたまったままで流れずにいる涙を、ハンケチでぎゅっと押しぬぐいながら、
黯然
(
あんぜん
)
と頭をたれた木村に
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
夏草や兵者どもの夢の跡——わたしも芭蕉翁を気取って、しばらく
黯然
(
あんぜん
)
たらざるを得なかった。まことに月並の感想であるが、この場合そう感じるのほかはなかったのである。
九月四日
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼はいきなり勘平の腕を
掴
(
つか
)
んだまま、つづけざまに頭を下げた。その眼には涙が光っていた。勘平は妙な気はしたが、相手がまじめなだけに、
黯然
(
あんぜん
)
としてそれを見守っていた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
嘗
(
かつ
)
て美しかりしコゲ茶色は、今何故に斯くも
黯然
(
あんぜん
)
たる
絳泥
(
あかどろ
)
色に変色したりや。其理由は足掛三年間の我が運命の多端なりし如く、又実に多端なり。先づ初めに東都の街塵に染みぬ。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
どうかしてあんなものが聞けるようにも一度なりたいと思うけれどもそれも駄目だと云うて暫く黙した。自分は何と云うてよいか判らなかった。
黯然
(
あんぜん
)
として
吾
(
われ
)
も黙した。また汽車が来た。
根岸庵を訪う記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
さすがに
黯然
(
あんぜん
)
となって、無言のまま眼を見あわせていたが、そうばかりはしていられないので、手早く部屋の内部をそこここと調べおわると、縁側の戸袋の薄くらがりの中へしゃがみこみ
顎十郎捕物帳:15 日高川
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ふたり共、
黯然
(
あんぜん
)
と、眼をあげて、星にしばだたいていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は
黯然
(
あんぜん
)
として
空
(
むなし
)
く
懐
(
おも
)
へるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
(
黯然
(
あんぜん
)
として、俯向く)
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
弘一君が
黯然
(
あんぜん
)
として云った。私は答える
術
(
すべ
)
を知らなかった。母夫人は
傍見
(
わきみ
)
をして目をしばたたいていた。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
清三は最後に弟の墓を
訪
(
と
)
うた。祖父の墓は足利にある。祖母の墓は熊谷にある。こうして、ところどころに墓を残して行く一家族の
漂泊的
(
ひょうはくてき
)
生活をかれは考えて
黯然
(
あんぜん
)
とした。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
しかしまた振り返って自分等が住んでいた甲斐の国の笛吹川に添う一帯の地を望んでは、
黯然
(
あんぜん
)
としても心も
昧
(
くら
)
くなるような気持がして、しかもその
薄
(
うっ
)
すりと霞んだ
霞
(
かすみ
)
の
底
(
そこ
)
から
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
若し夫野口君に至つては、予の最近の閲歴と密接な関係のあつた人だけに、予の悲みも
亦
(
また
)
深からざるを得ない。其日は、古日記などを繙いて色々と故人の上を忍びながら、
黯然
(
あんぜん
)
として
黄昏
(
くわうこん
)
に及んだ。
悲しき思出:(野口雨情君の北海道時代)
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
自分の田舎寺に隠れた心の動機を考えて、主僧は
黯然
(
あんぜん
)
とした。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
諸戸は
黯然
(
あんぜん
)
として云った。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
黯
漢検1級
部首:⿊
21画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“黯”で始まる語句
黯
黯青
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黯澹
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黯黮
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黯褐
黯黒