とこ)” の例文
新字:
と謂ツたが、おん出方でかたまで下司な下町式になツて、以前凛としたとこのあツた顔にも氣品がなくなり、何處か仇ツぽい愛嬌が出來てゐた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
周三はまた、「何點どこか俺の生母せいぼに似たとこがある。」と思ツた。で何となく懐慕なつかしいやうにも思はれ、また其のさびしい末路まつろあはれになツて
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
同時にまたおふくろという人は、些とぐうだらなとこはあるが、氣のさくい、どくのない人といふことも解ツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
たがひなかあつたかとこがあツて欲しいといふことなんだ………が、おれの家では、お前もひとりなら、俺もひとりだ。お互に頑固に孤獨を守ツてゐるのだから、したがツてお互にひやツこい。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
でも此様こんはずでは無かツたがと、躍起やつきとなツて、とこまでツてる、我慢がまんで行ツて見る。仍且やツぱり駄目だめだ。てん調子てうしが出て來ない。揚句あげく草臥くたびれて了ツて、悲観ひくわん嘆息ためいきだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
尤も學士には、ちよツと高慢なとこがあツて、少し面倒な、そして少し得意な説を吐く時には、屹度きつと「解るか。」と妙に他を馬鹿にしたやうに謂ツて、ずらり學生の顏を見𢌞したものだ。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
理合きめあらいのに、皮膚の色が黄ばんで黒い——何方どちらかと謂へば營養不良えいやうふりやうといふ色だ。せまツた眉にはんとなく悲哀ひあいの色がひそむでゐるが、眼には何處どことなく人懷慕ひとなつことこがある。はゞ矛盾むじゆんのある顏立だ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)