だんま)” の例文
旧字:
おぢさんはだんまりで、そばわたしまでものをいふことが出来できなかつたんだもの、なにもくらべこして、どつちがえらいともわかりはしないつて。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
返事を、引込ひっこめた舌のさきで丸めて、だんまりのまま、若い女房が、すぐ店へ出ると……文金の高島田、銀の平打ひらうち高彫たかぼり菊簪きくかんざし
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だんまりでは相済まないと思って、「先生、わたくしも、京子とともに無点本の水滸伝。」上杉先生が、「そのひまに、すいとんか、おでんを売れ。」「ははっ。」とこそは荷高似内
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頬白は智慧ちえのある鳥さしにとられたけれど、さえずってましたもの。ものをいっていましたもの。おじさんはだんまりで、そばに見ていた私までものを言うことが出来なかったんだもの。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……膳の来るにも間があろう。そう思ったので帽子もかぶらないで、だんまりで、ふいと出た。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よろしくばおめになさいまし。」と大いに澄し、顔を見合せてだんまりとなった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この間もあので驚かしゃあがった、尨犬むくいぬめ、しかも真夜中だろうじゃあねえか、トントントンさ、誰方だと聞きゃあ黙然だんまりで、蒲団ふとん引被ひっかぶるとトントンだ、誰方だね、だんまりか、またトンか
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と渡す——かけひがそこにあるのであったら、手数てかずは掛けないでも洗ったものを、と思いながら思ったように口へは出ないで、だんまりで、恐入ったんですが、やわらかく絹がからんで、水色に足の透いた処は
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ですがね、欄干へ立って、淀川堤を御覧なさると、貴方あなた恍惚うっとりとおなんなさいましたぜ。じっと考え込んでおしまいなすって、何かお話しするのもお気の毒なような御様子ですから、私もだんまりでね。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
げたのだらう。月に青道心あおどうしんのやうで、さつきからだんま老人としより
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)