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くろだな
振離すと、
床まで落ちず、宙ではらりと、影を乱して、
黒棚に、バツと乗る、と
驚駭に
衝と
退つて、夫人がひたと
遁構への
扉に
凭れた時であつた。
振離すと、
床まで
落ちず、
宙ではらりと、
影を
亂して、
黒棚に、バツと
乘る、と
驚駭に
衝と
退つて、
夫人がひたと
遁構への
扉に
凭れた
時であつた。
黒棚、
御廚子、
三棚の
堆きは、われら
町家の
雛壇には
些と
打上り過ぎるであろう。
箪笥、
長持、
挟箱、
金高蒔絵、
銀金具。小指ぐらいな
抽斗を開けると、中が
紅いのも美しい。
と力なささうに、疲れたらしく、
立姿のなり、
黒棚に、柔かな
袖を掛けたのである。
と
力なささうに、
疲れたらしく、
立姿のなり、
黒棚に、
柔かな
袖を
掛けたのである。
と
俯目に、
睫毛濃く、
黒棚の
一ツの
仕劃を見た。
袖口白く手を
伸べて
枕許の
小さな
黒棚に、一
輪挿があつて、
撫子が
活かつて
居ました。