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黄褐色
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くわうかつしよく
其の
日も
埃が
天を
焦して
立つた。
其の
埃は
黄褐色で
霧の
如く
地上の
凡てを
掩ひ
且つ
包んだ。
雜木林は一
齊に
斜に
傾かうとして
梢は
彎曲を
描いた。
屡々云つてゐたやうに彼の眼は黒いのだつたが、今は
黄褐色の、否、その凄さの裡には血の色の光があつた。
黄褐色の
霧を
以て四
圍を
塞がれつゝ
只管に
其の
唐鍬を
打つて
居た
勘次は
田圃を
渡つて
林を
越えて
遠く
行つて
居た。
彼は
此の
凶事を
知る
理由がなかつた。
まだ
幾らも
刈られてない
田は、
黄褐色の
明るい
光を
反射して、
處々の
畑に
仕る
桑も、
霜に
逢ふまではと
梢の
小さな
軟かな
葉の四五
枚が
潤ひを
有つて
居るのみである。