黄白こうはく)” の例文
私も知らん顔もしていられないから、老人へは葉巻を二本、他の連中へもそこばくの黄白こうはくを撒いて「どうぞよろしく」とやった。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
華族と云い貴顕きけんと云い豪商と云うものは門閥もんばつの油、権勢けんせいの油、黄白こうはくの油をもって一世をさかしまに廻転せんと欲するものである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蘭袋は向井霊蘭むかいれいらんの門に学んだ、神方しんぽうの名の高い人物であった。が、一方また豪傑肌ごうけつはだの所もあって、日夜さかずきに親みながらさらに黄白こうはくを意としなかった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こう云う風であるから真面目に熱心に斯道しどうの研究をしようと云う考えはなく少しく名が出れば肖像でも画いて黄白こうはくむさぼろうと云うさもしい奴ばかりで
根岸庵を訪う記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「ご尤もな心配じゃ。しかし、幕府の方は、御老中や要路の役人方へ、相応な黄白こうはくをもってご挨拶いたせば、まだ二年や三年のご猶予はして下さると思うが……」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はこの度の総選挙に全く黄白こうはくの力が駆逐されて言論に由る政見の力が選挙民の良心を感動させることを望む意味から、どの候補者も卓越した政見の発表に努力し
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
黄白こうはくに至りては精励せいれい克己こっきむくいとして来たるものは決して少なくなかろう。古人こじんの言にあるごとく
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
私にしても、仮にふところがもっとあたたかであったら、容易にかれらの手からのがれがたかったろうと思う。人は黄白こうはくの前には、しばしば恥を忍んで屈しなければならないものだ。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
魯国ろこく宣教師に教化されし希臘ぎりしゃ教徒は国賊なり、監督教会は英国が世界を掠奪せんがための機関にしてその信徒は黄白こうはくのために使役せらるる探偵なり、長老教会は野望人士の集合所なり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
およそ今回の事件は、中、英、国際の紛争に非ずして、実は黄白こうはく消長の関鍵かんけんであり、これを換言すれば、即ち、亜洲黄色人種が、白種に滅亡せらるるの先導に非ずして他にはない。試みに思い給え。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
日本では、大金を出して勲章を買ったり、売って儲けたりする代議士や大官はあっても、個人の謝志を些少さしょうなりとも黄白こうはくの形でポケットする警官はあるまい。また、あっては大変だ。が、これは余談。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
さて太夫はなみなみ水を盛りたるコップを左手ゆんでりて、右手めてには黄白こうはく二面の扇子を開き、やと声けて交互いれちがいに投げ上ぐれば、露を争う蝶一双ひとつ、縦横上下にいつ、逐われつ、しずくこぼさず翼もやすめず
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼の下宿に黄白こうはくを詰めた菓子箱が山積みしていた。
それから、それをてのひらでもみ合せながら、せわしく足下へ撒きちらし始めた。鏘々然そうそうぜんとして、床に落ちる黄白こうはくの音が、にわかに、廟外の寒雨かんうの声を圧して、起った。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私にしても、仮にふところがもっとあたたかであったら、容易にかれらの手からのがれがたかったろうと思う。人は黄白こうはくの前には、しばしば恥を忍んで屈しなければならないものだ。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
上洛者のたれかれを問わず、これを奏聞そうもんに達して、それらの武門が望む叙爵じょしゃく栄職えいしょくの名を聴許ちょうきょし、武家の音物いんもつ黄白こうはくを収入とするのが、ともあれ、この人々の唯一な生きる道ではあった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だいぶ商品をお持ちのようだが」と甲斐が云った、「そこもとは売込み先を間違えられたようだ、もういちどいうが、私はそういうことには興味もないし、またそれに支払う黄白こうはくも持たない」