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魘
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おび
ふりがな文庫
“
魘
(
おび
)” の例文
颱風
(
たいふう
)
……その
魘
(
おび
)
え切った霊魂のドン底に
纔
(
わず
)
かに生き残っている人間らしい感情までも、脅やかし、吹き飛ばし、掠奪しようとする。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
此犬はあまり大きくもないが、
金壺眼
(
かなつぼまなこ
)
の意地悪い
悪相
(
あくそう
)
をした犬で、
滅多
(
めった
)
に恐怖と云うものを知らぬ鶴子すら初めて見た時は
魘
(
おび
)
えて泣いた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
この途端に抱寝していた
小児
(
こども
)
が俄に
魘
(
おび
)
えて、アレ
住
(
すみ
)
が来た、怖いよゥと火の付くように泣立てる。
お住の霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
馬鹿〻〻
(
ばか/\
)
しいことだが、此の様な事もあつたかと思ふと、何程都の人〻が将門に
魘
(
おび
)
えたかといふことが
窺知
(
うかゞひし
)
られる。菅公に
魘
(
おび
)
え、将門に魘え、天神、明神は沢山に世に
祀
(
まつ
)
られてゐる。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかし今彼は破産してしまって、郊外の
破屋
(
あばらや
)
に棲んでゐるのであった。女房も丁稚もゐなかった。なにくそ、大丈夫だ、この家が顛覆するなら、してみろと彼は
魘
(
おび
)
えながら闇の中で力み返った。
難船
(新字旧仮名)
/
原民喜
(著)
▼ もっと見る
汗を拭いていた一知青年が、急に暗い、
魘
(
おび
)
えたような眼付をしてうなずいたのを見ると、草川巡査も何気なく
点頭
(
うなず
)
いてマユミを振返った。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼
(
か
)
の画工の筆に成った恐しき婦人の絵姿は
此
(
こ
)
のほど全く
出来
(
しゅったい
)
したが、何さま一種云われぬ物凄い恐しい顔である、婦人の如き、
其
(
そ
)
の図を一目見るや
忽
(
たちま
)
ちに
魘
(
おび
)
えて
顫
(
ふる
)
えて
画工と幽霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その一言一句に肩をすぼめ、眼を閉じて
魘
(
おび
)
えながらも、不思議なほど冷然と聞いていた呉羽は、やがて冷やかな黒い瞳をあげて微笑する。
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ある日の夕ぐれ、
突然
(
だしぬけ
)
にドドンと凄じい音がして、俄に家がグラグラと揺れ出したので、去年の大地震に
魘
(
おび
)
えている人々は、ソレ地震だと云う大騒ぎ、ところが又忽ちに鎮って何の音もない。
池袋の怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
次から次に夢の中へ現われて来るので、そのたんびに胎児は驚いて、
魘
(
おび
)
えて、苦しがって、母の胎内でビクリビクリと手足を動かしている。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
一瞬間にコンナ事を考え廻らしつつ
魘
(
おび
)
え、わなないている私の顔を、椅子の上に
反
(
そ
)
り返った正木博士は依然として微笑を含みつつ眺めていた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
女将
(
かみさん
)
は返事をする準備として、とりあえず取って付けたように
魘
(
おび
)
えた顔をした。この辺には珍らしく眉を剃って
鉄漿
(
おはぐろ
)
をつけているからトテモ珍妙だ。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と云いながらお神さんは、一層
魘
(
おび
)
えた表情になって、唾をグッと
嚥
(
の
)
み込んだ、私は
占
(
し
)
めたと思いながら帳場に近づいて、火鉢の
炭団
(
たどん
)
にバットを押しつけた。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
思わず両手で頭の毛を掴み締めつつ、次に出て来る正木博士の言葉を、針の尖端のように
魘
(
おび
)
えつつ待っていた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
四人の警官に取巻かれた戸若運転手はチョッと
魘
(
おび
)
えたらしい。サッと唇の色をなくしたが、交通巡査が
注
(
つ
)
いで遣った熱い茶を
啜
(
すす
)
ると又一つホッと溜息をした。
衝突心理
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
魘
(
おび
)
えたであろう。しかし、生活の鞭に追われて毎日毎日この社会に出入りしているうちに、彼女達は次第にこの不忠孝不仁義の気儘さに見慣れ、聞き慣れて来た。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
物々しい一行の姿にスッカリ
魘
(
おび
)
えてしまったらしく、一人も家の中に
這入
(
はい
)
ろうとする者は無かった。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼の頭の中のように夕霧の立籠めた中からポカリポカリと光り出して来る自動車の
燈火
(
あかり
)
やネオンサインに
魘
(
おび
)
え魘えよろめいて行くうちに、余程長いこと歩いたのであろう。
殺人迷路:07 (連作探偵小説第七回)
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
進化か退化か知らないが、東京人がこうまで
魘
(
おび
)
えてちぢこまっているかと思うと情なくもある。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
そうして百に近い負傷兵の何となく
魘
(
おび
)
えた、怨めしそうな、力ない視線に私の全神経が
射竦
(
いすく
)
められて、次第次第に気が遠くなりかけて来た時にヤット全部の診察、研究が終ると
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼は
愕然
(
がくぜん
)
となった。
魘
(
おび
)
えたゴリラのように身構えをし直して、少女の顔を振り返った。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その唇の近くで白い指先をわななかしながらすぐ傍の芝生の上に残っている輪形の鉢の
痕跡
(
あと
)
を見まわしていたが、やがてオドオドした
魘
(
おび
)
えたような眼付きで、階段の上を見上げた。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と大見得を切って立ち上っても、臆病者の鼻の表現は必ず
魘
(
おび
)
えた色を見せております。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と
魘
(
おび
)
えたような眼付をした。その火の玉というのは、犯人が被害者の隠している
金
(
かね
)
を探している懐中電燈の光りじゃなかろうか……といったような想像が、直ぐに頭へピーンと来た。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ボーイはその剣幕に驚いて一寸
後退
(
あとじさ
)
りをしたが、
魘
(
おび
)
えた眼付きをして私を見上げた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
今更のように
魘
(
おび
)
えた蒼白い顔を時々見交していたものであったが、その晩一晩置いて翌る朝の八時頃、
隣家
(
となり
)
の田宮特高課長の処から、尋常一年生の坊ちゃんが、私を迎いに来てくれたから
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
伊那少年の横顔からサッと血の気が
失
(
う
)
せた。
魘
(
おび
)
えたように眼を丸くして俺と船長の顔を
見比
(
みくら
)
べた。ホットケーキを切りかけた白い指が、ワナワナと震えた。……船長も内心
愕然
(
ぎょっ
)
としたらしい。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そんなに
魘
(
おび
)
える位なら、そんな
恐怖
(
こわ
)
い家の近くへ来なけあいいにと思った。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私の周囲には二三人の
田植連
(
たうえれん
)
が、
魘
(
おび
)
えた顔をして立っているきりである。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
呼吸を
魘
(
おび
)
えさせながら、そうして如何にも大事件らしく呼び交す感傷的な叫び声の中に、色々の鳥や、虫の影を飛立たせながら、眼も眩むほどイキレ立つ大地の上を汗にまみれて
匐
(
は
)
いまわった。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その
魘
(
おび
)
えた眼色を見返した良助も一緒に立止まってニッコリ笑った。
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そうして
魘
(
おび
)
えたように唇をわななかしつつ切れ切れに云った。
霊感!
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と未亡人は
魘
(
おび
)
えた声で云った。妻木君はホッとため息をした。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
魘
(
おび
)
えたような眼つきで、チエ子と、父親の顔を見比べた。
人の顔
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
青白い
魘
(
おび
)
えたような眼付きで交通巡査の顔を見た。
衝突心理
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そうして田舎者を
魘
(
おび
)
えさしているのである。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
と青眼先生は
魘
(
おび
)
えたような声で申しました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
魘
漢検1級
部首:⿁
24画