食卓ちゃぶだい)” の例文
にいさんも、おねえさんも、おかあさんも、食卓ちゃぶだいのまわりで、いろいろのおはなしをして、わらっていらしたときに、いちばんちいさいまさちゃんが
ペスをさがしに (新字新仮名) / 小川未明(著)
お杉はじぶんさかずきへ酒をぎながら、汚い食卓ちゃぶだい向前むこうがわにいる長吉の方を見た。眼の不自由な長吉は、空になった盃を前へ出していた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かしげてゐました。わたくしに宛てた継子さんの手紙は、もうすつかり書いてしまつて、状袋じょうぶくろに入れたまゝで食卓ちゃぶだいの上に置いてありました。
しばらくすると、食卓ちゃぶだいがランプの下に立てられた。新吉はしきりに興奮したような調子で、「酒をつけろ酒をつけろ。」とお作に呶鳴どなった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「いわば、お儀式用の宝ものといっていいね、時ならない食卓ちゃぶだいに乗ったって、何も気味の悪いことはないよ。」
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ台所だいどこで使う食卓ちゃぶだいか、たかだかあら鉄瓶てつびんぐらいしか、あんな所じゃ買えたもんじゃありません」と云った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
食卓ちゃぶだいの上には微暗い電燈がさがっていた。主翁はその電燈のたまをちょと見たあとで、右側をちらと見た。そこには庖厨かっての方へ出て往く障子があった。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
継子さんは食卓ちゃぶだいの上にうつ伏してゐるので、初めはなにか考へてゐるのかと思つたのですが、どうも様子が可怪おかしいので、声をかけても返事がない。
ほっとした草臥くたびれたなりで、真中まんなかに三方から取巻いた食卓ちゃぶだいの上には、茶道具の左右に、真新しい、擂粉木すりこぎ、および杓子しゃくしとなんいう、世の宝貝たからものの中に、最も興がった剽軽ひょうきんものが揃って乗っていて
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山田はこう云って食卓ちゃぶだい越しに眼をやった。三十前後の微髭うすひげの生えた精悍せいかんな眼つきをした男が坐っていた。中古ちゅうぶるになった仙台平せんだいひらはかまひだが見えていた。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この話をしている我々三人は、マレー半島の一角に横たわっている小さい島——シンガポールの町の、ある料理屋の三階に食卓ちゃぶだいを取りまいているのであった。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お杉は手にしていたさかずきを投げつけた。盃は長吉のひたいに当って食卓ちゃぶだいの上にある漬物の皿の中へ落ちた。音蔵は手を出してその盃をさえぎろうとしたがおそかった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さうして、食卓ちゃぶだいにむかつて手紙をかき始めたさうです。その手紙はわたくしに宛てたもので、自分だけが後に残つてわたくし一人を先へ帰した云訳いいわけが長々と書いてありました。
「絹漉ですか」主翁はこう云って、食卓ちゃぶだいの向うでとうにめしをすまして行火あんかにあたっている女房の方を見て、「絹漉とおっしゃるのだ、まだ少し残っているのだな」
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そうして、食卓ちゃぶだいにむかって手紙をかき始めたそうです。その手紙はわたくしにあてたもので、自分だけが後に残ってわたくし一人を先へ帰した言いわけが長々と書いてありました。
停車場の少女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこには足の低い食卓ちゃぶだいが置いてあった。秀夫は昨夜ゆうべ客のいた処はここであったなと思いながらともを背にしてすわった。そのうちに女は引かえして往って火鉢ひばちを持って来た。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小さい食卓ちゃぶだいの上でその第一冊から読みはじめた。
西瓜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
主翁は怖ろしさに呼吸いきが詰るように思った。彼は食卓ちゃぶだいすがりつくようにもたれたが、四辺あたりが気になるのでやっとの思いで土間の方を見てから、そのあとで右の方の障子しょうじを見た。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
丹前の前には円い食卓ちゃぶだいがあった。その食卓を中心にして右側にいるのは、三十前後のセルのはかま穿いた壮士風の男であった。それはばかに長くしたもみあげの毛が眼だっていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
秀夫はそう云い云い食卓ちゃぶだいの前へ坐った。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)