飛越とびこ)” の例文
ベンヺ いや/\、此方こっちはしってて、この石垣いしがき飛越とびこえた。マーキューシオーどの、んでさっしゃい。
怪しの者は首肯うなずいて、たちまちひらりと飛び出したかと見るうちに、樹根きのね岩角いわかど飛越とびこえ、跳越はねこえて、小さい姿は霧の奥に隠れてしまった。お杉は白い息をいて呵々からからと笑った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……ゆき——ゆきと、ぶのが、うやら神戸行かうべゆき飛越とびこして、糸崎行いとざきゆき——とふやうにさびしくきこえる。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
トラックだの乗合自働車じどうしゃが、ぶうぶうと走っているので、AもBも、すっかり元気づいて、前をちょこちょこ歩いてゆく女のねじパンのような束髪の上を、恰度ちょうど木馬を飛越とびこえる要領で
そうして僅かの沈黙の間に、私の恐れていた説明の箇所を飛越とびこして説明を続けた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「べらぼうめ、飛越とびこしたぐらゐの、ちよろがはだ、また飛返とびかへるに仔細しさいはあるめえ。」と、いきつて見返みかへすと、こはいかに、たちま渺々べう/\たる大河たいがつて、幾千里いくせんりなるやはてず。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いゝえ、まあ、ながしたはうは、おどく娑婆しやば一人ひとり流産りうざんをしませうけれど、そんなことよりおまへさん、はしわたらないまへだと、まだうにか、仕樣しやう分別ふんべつもありましたらうけれど、氣短きみじか飛越とびこしてしまつてさ。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その溝さ飛越とびこして、そのみち
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)