トップ
>
顴骨
>
かんこつ
ふりがな文庫
“
顴骨
(
かんこつ
)” の例文
栄介は憮然として
顴骨
(
かんこつ
)
のあたりを押えた。城介も顴骨が出ていたが、栄介もそうだ。近頃痩せたと見え、ことにそれが目立つ。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
そう云う薄暗い堂内に
紅毛人
(
こうもうじん
)
の
神父
(
しんぷ
)
が一人、
祈祷
(
きとう
)
の頭を
垂
(
た
)
れている。年は四十五六であろう。額の
狭
(
せま
)
い、
顴骨
(
かんこつ
)
の突き出た、
頬鬚
(
ほおひげ
)
の深い男である。
おしの
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
紅顔
豊頬
(
ほうきょう
)
、みずみずしかった切長の黒瞳も、毛を
毟
(
むし
)
られたシャモみたいな肌になり
顴骨
(
かんこつ
)
がとびだし、乾いた瞳に絶えず脅えた表情がよみとられた。
さようなら
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
これも誰かが手真似をしては
怪
(
け
)
しからぬ笑い声を立てた。
顴骨
(
かんこつ
)
が高くて、さほど美しくはないが、近代的ともいえばいえる魅力を持った顔だちだ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
眼の凹んだ
顴骨
(
かんこつ
)
の著しく出張った男でしたが、解剖の行われる間、彼はマスクのような顔をして、呼吸一つさえ変えずに、柱のように突立って
居
(
お
)
りました。
三つの痣
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
▼ もっと見る
だから、小次郎の親の良持はすでに、その
顴骨
(
かんこつ
)
や、
頤
(
おとがい
)
の頑固さ、髯、髪の質までが、都の人種とは異っていた。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
顴骨
(
かんこつ
)
も出ていない。
下顎
(
したあご
)
にも癖がない。その幅のある
瓜実顔
(
うりざねがお
)
の両側に大きな
耳朶
(
みみたぶ
)
が少し位置高く開いている。
九代目団十郎の首
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
円い形の良い頭蓋骨が黄色い薄い皮膚の下にはっきり想像され、
凹
(
くぼ
)
んだ眼は静かに閉じ、
顴骨
(
かんこつ
)
から下がぐっと落ちこんで、先端の黄色くなった白髯が大分伸びている。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
古賀は
顴骨
(
かんこつ
)
の張った、四角な、
赭
(
あか
)
ら顔の大男である。
安達
(
あだち
)
という美少年に特別な保護を加えている処から、服装から何から、誰が見ても硬派中の
鏘々
(
そうそう
)
たるものである。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私は先生の眼や
顴骨
(
かんこつ
)
や鼻立から、きっと朝鮮人であるのに違いないと思いました。だがあなたはそんな素振り一つしなかったようです。私は自動車の助手をしています。
光の中に
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
目、鼻、頬、特に
顴骨
(
かんこつ
)
の上と耳の下などには、われわれの日常見なれている特殊の肉づきがある。皮膚の感じもそうである。しかしこれがシナ人でないとは断言はできぬ。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
顴骨
(
かんこつ
)
から下が断崖状をなしている所を見ると、その部分の表出が険しい圭角的なもののように思われ、また真直に垂下した鼻梁にも、それが鼻翼よりも長く垂れている所に
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「元から頬が削げていたのが一層削げて、
顴骨
(
かんこつ
)
ばかり尖り、ゲッソリ陥込む
眼窩
(
がんか
)
の底に勢いも力もない充血した眼球が曇りと濁った光を含めて何処か淋しそうな笑みを浮かべて……」
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
その、左右に、
直参髷
(
じきさんまげ
)
の武家、いずれも中年なのが二人、うしろには、富裕なしかし商略に鋭そうな目付をした、
顴骨
(
かんこつ
)
の張った
痩身
(
そうしん
)
の男が控えていた。その外は、供の者であろう——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
口はややこれらに負けるようだが、厚い唇はきっと結んでいる。骨組みはがっちりしていて、
顴骨
(
かんこつ
)
が特に秀でている。どうしても人中では目立つ派手な男性的な顔付きであったことが想像される。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
周立五
(
しゅうりつご
)
という男の話ですがね、その男は、
顴骨
(
かんこつ
)
がひっこんでて、
頤
(
あご
)
がすっこけ、
口鬚
(
くちひげ
)
も生えないで、甚だ
風采
(
ふうさい
)
のあがらないうえに、三十二になっても、童子の試にとおらないという困り者でしたが
涼亭:――序に代へて――
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
太田黒兵助の方は、右の耳から横へかけられた太刀が口の中まで斬られているし、伝七郎の方は、頭の頂上からやや斜めに鼻ばしらを少し
外
(
はず
)
れて、眼の下の
顴骨
(
かんこつ
)
まで斬られている。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして何か思い出したように、
顴骨
(
かんこつ
)
の張った大きい顔に
笑
(
えみ
)
を湛えて、詞を
続
(
つ
)
いだ。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
痩
(
や
)
せた・
顴骨
(
かんこつ
)
の出た老人で、
頸
(
くび
)
に珠数のような飾を幾つも着けている。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
鋭く稜形に切りそがれた
顴骨
(
かんこつ
)
、鼠色の顎鬚——と数えてみても、一つは性格の圭角そのもののようでもあり、またもう一つからは、浅薄な異教味や、喝するような威々しさを感ずるに過ぎなかった。
夢殿殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
無髯
(
むぜん
)
で
赭丹
(
しゃたん
)
色をした顔には、
顴骨
(
かんこつ
)
突起と下顎骨が異常に発達している代りに、鼻翼の周囲が陥ち窪み、その相はいかにも醜怪で——と云うよりもむしろ脱俗的な、いわゆる
胡面梵相
(
こめんぼんそう
)
とでも云いたい
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
また
面
(
おも
)
長ではあるが、
角
(
かく
)
ばッた
顴骨
(
かんこつ
)
と鋭い
眉宇
(
びう
)
をそなえてもいる。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“顴骨”の意味
《名詞》
顴骨 (かんこつ、けんこつ)
ほおぼね。
(出典:Wiktionary)
顴
漢検1級
部首:⾴
26画
骨
常用漢字
小6
部首:⾻
10画