はし)” の例文
やがて退まかり立ちて、ここの御社のはしの下の狛犬も狼の形をなせるを見、酒倉の小さからぬを見などして例のところに帰り、朝食あさげをすます。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
法皇は知らせを受けて、寝殿のはしがくしのに上皇を待っていた。高倉上皇、今年ことし二十歳、夜明けの月の光をやわらかに浴びて立っていた。
そして一座を見渡したのち、広い母屋おもやを廻って、二人を三段のはしの所まで引き出し、こおった土の上に衝き落す。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
みかどは、一たんはしノ間から公卿の座へ戻られ、法皇もまた内へ入らせ給うて、あらためてのお席となる。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大仏殿の二階の上には、千余人昇り上り、かたきの続くをのぼせじとはしをばひいてけり。猛火みやうくわまさし押懸おしかけたり。喚叫をめきさけぶ声、焦熱、大焦熱、無間むげん阿鼻あびほのほの底の罪人も、是には過じとぞ見えし。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
夕日ゆふひさす白琺瑯はくはふらうの石のはし
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みかどは寝殿しんでんはしにおしとねをおかれ、はしの東に、二条ノ道平、堀河ノ大納言、春宮とうぐうノ大夫公宗きんむね、侍従ノ中納言公明きんめい御子左みこひだりノ為定などたくさんな衣冠が居ながれていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
律師は偏衫へんさん一つ身にまとって、なんの威儀をもつくろわず、常燈明の薄明りを背にして本堂のはしの上に立った。たけの高い巌畳がんじょうな体と、眉のまだ黒い廉張かどばった顔とが、ゆらめく火に照らし出された。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蒼ざめた月を仰ぎながら、二人は目見えのときに通った、広い馬道めどうを引かれて行く。はしを三段登る。ほそどのを通る。めぐり廻ってさきの日に見た広間にはいる。そこには大勢の人が黙って並んでいる。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)