はだ)” の例文
むき身しぼり襦袢じゅばん大肌脱おおはだぬぎになっていて、綿八丈の襟の左右へはだけた毛だらけの胸の下から、ひものついた大蝦蟇口おおがまぐち溢出はみださせて、揉んでいる。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちや外套氏ぐわいたうし大欠伸おほあくびをしてきた。口髯くちひげ茶色ちやいろをした、けた人物じんぶつで、ズボンをはだけて、どつかと居直ゐなほつて
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
追従笑ついしょうわらいの大口を開くと歯茎が鼻の上まではだけて、鉄漿おはぐろげた乱杭歯らんぐいばの間から咽喉のどが見える。おびえたもんですぜ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しきりとその懐中ふところ覗込のぞきこみますのを、じろじろ見ますと、浅葱あさぎ襦袢じゅばんはだけまするまで、艶々つやつや露も垂れるげな、べにを溶いて玉にしたようなものを、こぼれまするほど、な、貴方様あなたさま
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引合せたコオトの襟を引掴ひッつかんで、何か、自分の胸が窮屈そうに、こうもがいて、引開ひっぱだけようとしたんだがね、思う通りにならなかったもんだから、(ええ)と云うと、かとはだけた
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……そうでないと、目が背中へつくわけがない、と吃驚びっくりしました。しかし一体、どっちが背だか腹だか、はだけた胸も腹も、のっぺらぼうで、人間としての皮の縫目が分りません。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卓子台ちゃぶだいの前へ、右のその三角帽子、外套のなりで着座して、左褄ひだりづま折捌おりさばいたの、部屋着をはだけたのだのが、さしむかいで、盃洗が出るとなっては、そのままいきなり、泳いでよろしい
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)