鈴鹿すずか)” の例文
あるいは、宮は偽者かもしれませんが、おととい以来、伊賀、鈴鹿すずか、美濃ざかいの野伏山賊のたぐいが呼びおうてここにむらがり、お道を
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中仙道は鵜沼うぬま駅を麓とした翠巒すいらんの層に続いて西へとつらなるのは多度たどの山脈である。鈴鹿すずかかすかに、伊吹いぶきは未だに吹きあげる風雲のいのしし色にそのいただきを吹き乱されている。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
坂の下へ着いた時分には、坂も曇れば鈴鹿すずかも曇る、はたしてポツリポツリと涙雨です。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
桑名くはな四日市よつかいちは昨夕の殘睡のうちにいつしか通りすごして、車道は漸う/\四山の群がる間をわけ登るに、冬近き空の氣色定めなく、鈴鹿すずかは雲に隱れて嘘のやうな時雨がはら/\と窓を打つてきた。
伊賀、伊勢路 (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
「宝剣、神鏡、玄上げんじょう(琵琶)、鈴鹿すずか(和琴)などをとり忘れるなよ」
坂は照る照る鈴鹿すずかくもる=といい、あわせりたや足袋たび添えて=と唱える場合には、いずれもつかれを休めるのである、無益むえきなものおもいを消すのである、むしろ苦労をまぎらそうとするのである、うささんじよう
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに来年は、一級仙格せんかくが進んで、鈴鹿すずかの神になる事になっておるが、両親は今年が十三回忌に当るから、此の七月にまた法要をしてくれようとしておるが、それでは到底鈴鹿の神になる事ができぬ。
女仙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ふりすてて今日は行くとも鈴鹿すずか八十瀬やそせの波に袖は濡れじや
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
伊勢鈴鹿すずか郡関町大字新所字破魔射場
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
馬子唄まごうた鈴鹿すずか越ゆるや春の雨
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鈴鹿すずかは曇る。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
四 伊賀いが名張なばりなど三郡。南伊勢の鈴鹿すずか河曲かわわ一志いちし飯高いいだか飯野いいの多気たけ度会わたらいなどの七郡。——それに尾張犬山城と、河田かわだとりでとは、秀吉へゆずること。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そういう御辺こそ、伊勢国、鈴鹿すずかの山賊であった者だろう」
ほかにも、同じ鈴鹿すずか郡の峰ノ城代岡本重政がやはり睨まれていたし、かたがた神戸信孝の岐阜失陥しっかんにも衝動しょうどうされて、同国の形勢は、とみに騒然たるものがあったらしい。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(滝川一益の領地を通過し、伊勢から鈴鹿すずかを越え、江州の西を廻って御帰国なされては……)
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつは、敵大軍も、数量いかにも物々しくは聞ゆるが、三国みくに鈴鹿すずかなどの尾甲びこう山脈の嶮を越えて来た長途の兵だ。軍需、食糧などの荷駄隊が多くを占めていることも察知するにかたくない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古典には、この賊徒なるものをたんに「——近江、伊賀、鈴鹿すずか、この界隈かいわいまでの強盗山賊あぶれども」としかその質を言っていないが、はたしてそんな有象無象うぞうむぞう手輩てあいばかりであったろうか。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、伊勢の鈴鹿すずか口へ向けて、急行させた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)