伊賀、伊勢路いが、いせじ
私には、また旅を空想し、室内旅行をする季節となつた。東京の秋景色は荒寥としてゐて眼に纏りがない。さればとて帝劇、歌舞伎さては文展などにさまで心を惹かるゝにもあらず、旅なるかな、旅なるかな。芭蕉も 憂きわれを淋しがらせよ閑古鳥 といひ、また …