酒場バア)” の例文
それから二三日した、或る日の午後、私はバツト酒場バアの二階の窓から、ぼんやりと、下の活動寫眞街を往き來してゐる群集を眺めてゐた。
水族館 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
街裏の酒場バア騒音と煙ショル・ウント・ラウフ」の一隅に於て、酔っぱらいの私がやはり酔っぱらいのオング君を、十年振りに見出したと思いたまえ。
十年後の映画界 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
クラスでは、礼奴れいぬさんがお母さんと二人で、横浜の海岸通りで酒場バアをやっているのだという噂が伝説のように信じられていた。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「ダイス」は清水町にあったスタンド酒場バアで、大阪の最初の空襲の時焼けてしまったが、「ダイス」のマダムはもと宗右衛門町の芸者だったから
世相 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
が、また娘分に仕立てられても、奉公人の謙譲があって、出過ぎた酒場バアの給仕とは心得が違うし、おなじ勤めでも、芸者より一歩退さがって可憐しおらしい。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たとえて言えば、僕はかつて、自分の好みの特種の自動車が来るまで、ブロード・ウェイの酒場バアで四十五分も待っていた一人の男を見たことがあった。
旅館から数間先に、小綺麗な酒場バアがある。彼はその朝軽い食事をしたのみで、午後四時になるまで、水一杯も口に入れなかった事を思出して苦笑した。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
実にウンザリしながらも、誘い出したのが身の不運とあきらめて、私は苦虫をつぶしたような顔をして、アーケード伝いにホテルの酒場バアへはいり込んだ。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「僕はボヘミヤンだ。君のようなエピキュリアンじゃない。到る処の珈琲店カッフェ酒場バア、ないしはくだって縄暖簾なわのれんたぐいまで、ことごとく僕の御馴染おなじみなんだ。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その中で活動写真、寄席よせ酒場バア喫茶店カフエエなどの軒を並べて居るゲエテまちだけが地獄の色の様な火明ひあかりに赤くけぶつて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
百合子が、酒場バアとホテルを兼ねて、そして村人達のクラブにもなつてゐるところだ——などゝ説明してゐた。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
恰も大阪の不良少年が、あの大阪式の言語道斷に俗惡な酒場バアで、毎晩々々給仕女を張つてゐるやうな生活をさへ、彼は藝術家の特權か何かと考へてゐるらしかつた。
短気で喧嘩ばかりしていて、いつも困っていたんです。途中で降りて酒場バアで一杯引っかけて来ると一層気が荒くなって、運転が乱暴になっちゃってトテモ恐ろしかったんです。
衝突心理 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから小半時間ばかりして、友の松本が彼らのよく行く銀座の××酒場バアへ入って行くと、そこのすみっこの方に一人で淋しそうにウイスキーを飲んでいる曽根の姿を見出した。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
酒場バアの主人は『赤』であるのか『白』であるのか、まるで見当がつかなかった。
放浪の宿 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
男の言葉を真似たり、「酒場バア」あたりから流れ出る流行語を口にしたりする。
言葉の魅力[第一稿] (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
私共はそれから、程近い郊外にある私の心やすい小いさな酒場バアへ行った。雨が降っているし、学生は大方試験最中だし、酒場は静かであった。
風船美人 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
どうせひまだからいつまでも待とうと云うのを——そういってね、一旦いったん運転手に分れた——こっちの町尽頭はずれの、茶店……酒場バアか。……ざっとまあ、饂飩屋うどんやだ。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平生自分が、大阪特有の安音樂の絶間なく奏されてゐる酒場バアを、口を極めて罵倒してゐるので
「レエヌが、横浜の海岸通りで、母と兄と三人で小さな酒場バアをやっていたことをご存知ですか」
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ドオバアからオスタンド迄の海上三時間は少しばかり波の立つのを感じた。晶子を酒場バアそば寝台ねだいへ休息させて置いて、自分は甲板かんぱんの上の船客せんきやくに交つて涼しい汐風に吹かれて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この寺院とはすかいになった十字路の角は、ロシヤ人の酒場バアだった。
放浪の宿 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
僕は近くの酒場バアに入つて
X氏の手帳 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
酒場バア
出発 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
『街を一時間近く散歩して、裏通りのヨロピン酒場バアへ寄りました。そこで夜中の一時近くまで酒を飲んで、それからタクシイを呼んで貰って八木の家へ泊りに行ったのです。』
遺書に就て (新字新仮名) / 渡辺温(著)
むかし、酒場バアをやっていたころ、どんなくらしをしていたのか知りませんが、たしかに、そのころのひどい生活がレエヌの性格の中へ深く染み込んでいるのにちがいないのです
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
白耳義ベルジツク仏蘭西フランスと同じ貨幤を用ひて居るが、たゞ十文銭や二十五文銭のあないて居るのがことなつて居る。自分は酒場バアの釣銭にそのあないた白銅を受取つて欧洲の銭で無い気がした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
最後に酒場バアへ行ってみると、わが四代目クラブの万能選手、執事兼家僕兼コック兼バアテン兼給仕兼運転手兼その他いろいろの詫間たくまが氷を割ってレモン・スカッシをつくっていた。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
すると酒場バアのところに居合せた窶れ果た女がドリアンに呼びかけた。『プリンス・チャーミング!』この声を聞いて今迄部屋の隅のテーブルに突伏していた一人の水夫が突然その顔を擡げた。
そして、誰でも知っているインタアナショナル酒場バアでビールを飲んだ。
さて、私はH——氏に誘われて、時々バンフィリヤ酒場バアへ行った。
また酒場バアの方からはさかんにコルクを抜く音が聞こえて来た。