近習きんじゆ)” の例文
此時江戸表には八代將軍吉宗公よしむねこう近習きんじゆめされ上意には奉行越前守は未だ病氣全快びやうきぜんくわいは致さぬか芝八山やつやまに居る天一坊は如何いかがせしやとほつと御溜息ためいき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それを聞いた時、瀬田は「暫時ざんじ御猶予ごいうよを」と云つて便所につた。小泉は一人いつもの畳廊下たゝみらうかまで来て、脇差を抜いて下に置かうとした。此畳廊下の横手に奉行の近習きんじゆ部屋がある。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
能登守殿のとのかみどの近習きんじゆが、其方そちあたまるか。』と、但馬守たじまのかみ不審ふしんさうにしてうた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
この上は修禪寺の御座所へ寄せかけ、多人數一度にこみ入つて本意を遂げうぞ。上樣は早業の達人、近習きんじゆの者共にも手だれあり。小勢の敵と侮りて不覺を取るな。場所は狹し、夜いくさぢや。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
殿のお微行しのび近習きんじゆまで
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
聞及び給ひ御家來におほせらるゝやう兼々かね/″\江戸表にもうはさありし天一坊とやら此度このたび下向と相見えたり此所にて出會ては面倒めんだうなり何卒行逢ゆきあはぬ樣にしたしと思召御近習きんじゆ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
月代さかやきらせるのにあたまうごかして仕樣しやうがないとはいてゐたが、醫者いしや坊主ばうずあたま草紙さうしにして、近習きんじゆ剃刀かみそり稽古けいこをするとは面白おもしろい。大名だいみやうあたまきずけては、生命いのちがないかもれないからな。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
天一坊初め一味のともがら町奉行御役宅の玄關げんくわんさしいでけるに豫て越前守が見知人として近習きんじゆに仕立召つれし彼甚左衞門善助は此時ぞと天一坊を能々よく/\ればまぎれもなき寶澤なれば越前守に目配めくばせなしひそかにたもと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)