かし)” の例文
少年はせい/″\十四、五、あまりかしこさうではありませんが、丈夫さうで、執拗しつあうで、頑固らしいところのあるのは、平次の註文通りでした。
かしこい彼は僕に恥をかせるために、自分の優越を利用するほど、品位を欠いた所作しょさをあえてし得ないのではあるが
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「私たちにはわかりません。」一人の子がつつましくかしこそうなをあげながら答えました。
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
父君ちゝぎみかつのぞめるごと海軍々人かいぐんぐんじんふう男兒をのことなりて、毎日まいにち/\かしこく、いさましく、おくつて有樣ありさまをばごとくにかたり、大佐たいさよ、濱島君はまじまくんよ、春枝夫人はるえふじんよ、されば吾等われらいま天運てんうんひらけて
ちょっとかしこく ちょっと静かで
ペンギン鳥の歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
この男はかしこさうですが、言ふ事に毒があつて、手當り次第誰の罪でもあばき立てるので、うつかりすると此方の搜査が迷はされさうでなりません。
して見ればいかにかしこい吾輩のごときものでも鼠の捕れんはずはあるまい。とれんはずはあるまいどころか捕り損うはずはあるまい。今まで捕らんのは、捕りたくないからの事さ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「フ、フ、いゝ氣のものだよ、お前は。正直に申上げると、八五郎などよりは、お品さんの方が餘程かしこいんだが」
客商売をする宿に対して悪い洒落しゃれを云ったと悟った津田は、かしこく二階を見上げた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お米はかしこさうな女ですが、生來内氣者らしく、平次がものを訊ねても、容易はハキ/\とは答へてくれず、これ丈けの事を聽くのが、精一杯の骨折でした。
銭形平次捕物控:260 女臼 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
愛憎を別にして考えて見ても、母はたしかに品位のあるゆかしい婦人に違なかった。そうして父よりもかしこそうに誰の目にも見えた。気むずかしい兄も母だけには畏敬いけいの念をいだいていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あれ、聽えたか、八。我慢しなよ、用心棒があんまりかしこいとわかると、曲者は用心して寄りつかねえ」
「這入る方も愚だばってんが、取られた方もあまりかしこくはなかごたる」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小娘は充分かしこさうではあるにしても、人間と人間との混み入つた關係は、わからないことも多く、わかつてゐるにしても、表現する言葉を持たなかつたのです。
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
この一語を聞くや否や、津田はたりかしこしときょにつけ込んだ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
斯んな調子の男は、自分のかしこさに壓倒されて、案外餘計なことをしやべりたがるものです。
お延は細い眼のうちに、かしこそうな光りを見せた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十九といふにしては少しふけて、かしこさうな淺黒い顏、キリリとした眼鼻立は決して美しくはありませんが、何んか知ら一度見た者の記憶に燒きつく特徴とくちようを持つて居ります。
人間はあまりかしこくねえようだが、勘定は確かだな、三万五千両の方が多いってことを
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
お滝姐さんはかしこいようでも人が好いから、俺の考え通りに仕事を運んでくれた。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
畜生ながらひじょうにかしこく、人のことばもおおかたはわかり、「西遊記」の孫悟空ほどではなくとも、ともかく、たいした働きのできることは、天魔太郎も月子もよく知っております。
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
十六の中僧と言つて良い位、あまりかしこくは無ささうですが、身體は相當です。
庭先へチヨコチヨコと入つて來たのは、十三四のかしさうな小僧です。
お秀はかししく美しいが善良な娘で、極力父の惡業をいさめましたが、到底及ばず、最後の伊勢屋押込みは、父より一と足先に出て目的の土藏の中に忍び込み、父の危險に身を以つて代るつもりでした。
品吉はかしこさうにも見えない癖に、なか/\よく觀察は屆きます。
言葉少なにひかへた十八の娘、色白で、上品で、ノツペリして、美人系に屬する顏立ちには違ひありませんが、一と言、二た言話してゐるうち、この娘があまりかしこくないことに平次は氣がつきました。
と少しかしこくなささうな權助の聲が突拔けます。